「社会にうまく馴染めないけれど、ねこに救われて生きている」さまざまな悩みを抱えた人を優しく癒やす“ねこ×グルメ漫画”【著者インタビュー】
公開日:2025/11/17

ねこと人間の絆を表現したねこ漫画にはほっこりさせられるもの。中でも、ねこが持つ温かみを柔らかなイラストで巧みに表現し、読者の心を癒やしているのが、漫画家・ねこまき(ミューズワーク)さん。今年10周年を迎えた代表作『ねことじいちゃん』(KADOKAWA)には、妻に先立たれた大吉じいさんと愛猫のタマの穏やかな暮らしが描かれており、目尻が下がります。
そんなねこまきさんが手掛けたのが、「ねこ×グルメ」をテーマにしたねこ漫画『深夜3時のくろねこ喫茶』(スターツ出版)。ねこまきさんの新境地とも言える本作の舞台は、ねこが集い、悩める人間が迷い込むこともある“真夜中限定のくろねこ喫茶”。
かわいらしいねこの姿に癒やされながら、日常の中で感じるモヤモヤを軽くしてくれる本作はどんな経緯で誕生し、ねこまきさんはどんな想いを込めたのでしょうか。
――本作に登場する、無愛想だけどねこには優しい寡黙なマスター・しずおさんは魅力的なキャラクターですが、モデルなどはいらっしゃるのでしょうか。
ねこまきさん(以下、ねこまき):モデルはいませんが、私自身の一部を投影しています。人付き合いがあまり得意ではなく、社会にうまく馴染めもしないけれど、ねこに救われて生きている――。そんな人を描きたくて。
これから少しずつ、しずおさんの過去や想いも描いていけたらと思っています。“静かな中に優しさを持つ”人だと伝わっていったらうれしいです。
――しずおさんの飼いねこで真夜中のねこ喫茶店のマスターとなる「くろ」や、その業務をサポートする「くまごろう」「そら」も年齢や毛色が異なる愛らしいキャラクターですよね。
ねこまき:初めは黒ねこの「くろ」がひとりで喫茶店のマスターとして、ゲストを迎える予定でした。ねこ界では少しマイノリティな存在の黒ねこが、社会の中で生きづらさを感じて喫茶店に迷い込んできた人たちにホッとする食べものを提供したり、温かい言葉を贈ったりして、少しだけ心を軽くする――。そんな風に、そっと寄り添うような物語にしたくて。
今後は、くろやくまごろう、そらが抱えている心の傷も描く予定です。互いを理解し合い、寄り添いながら生きる3匹の関係にも注目してほしいです。
――ちなみに、収録作の中で特におすすめの回は?
ねこまき:一番好きな回は、最後に単行本限定で書き下ろしたお話です。くまごろうが、しずおさんに拾われた日のことを思い出すサイレント漫画になっています。
くまごろうはおじいちゃんねこなので、記憶はところどころ曖昧。でも、しずおさんとの出会いだけは決して忘れない――。このお話には、ねこたちが私との出会いをいつまでも覚えていてくれますように…という願いも込めています。
取材・文=古川諭香
