相談もなく仕事を辞めた挙げ句、家族を置いて家を出ていったクズ夫。絶望の中、残された嫁と義母は手を取り合いともに暮らすことを選ぶ【書評】
公開日:2025/11/18

夫の直哉が、妻の亜希と息子、そして同居する実母(亜希の義母)の3人を残して出て行く場面から始まる『あなたが私を捨てたから 義母と2人でクズ夫から全て奪います』(とりまる ねこぽちゃ/KADOKAWA)。悲壮感のある出だしだが、本作は自分たちを捨てた直哉に、凛として立ち向かう亜希と義母の姿にスカッとさせられる作品だ。
主人公・亜希と直哉の関係は彼女の一目惚れから始まった。しかし体の関係を許した途端、直哉は亜希を雑に扱いはじめ、結婚後に生まれた息子の面倒も見ない。そしてある時、直哉が誰にも相談せず仕事を辞めていたことが発覚し、母親から注意を受けた彼は亜希と話し合うことすら拒否して家を出て行ってしまう。
義母は亜希に「直哉を捨てて自由になっていい」と説得するが、義母は良識があり初対面の頃から優しく寄り添ってくれた存在。亜希は「義母を大切にしたい」という思いから、直哉との離婚後も一緒に暮らすことを決意するのだった。
本作はタイトルから夫妻間の激しい駆け引きが展開されるのかと思いきや、主人公と義母が終始冷静に直哉と向き合う様が描かれる。亜希と直哉が対面する場面はいくつかあるが復讐劇のように怒りをぶつけるのではなく、整然とした姿勢と言葉のみで立ち向かうのだ。
亜希は最初、直哉に対して強く出られなかったが、息子と義母を守るため自ら彼へ立ち向かうようになっていき、物語序盤とは見違えるほどの成長を見せる。義母も祖父母に甘やかされて育った息子に負い目を感じつつ、一貫して自分を思ってくれた亜希と孫のために何ができるか考え行動していく。自分たちを見捨てた直哉への報復が本作の見どころだが、お互いを支え合うふたりにも注目してほしい。
直哉との離婚後も一緒に暮らす亜希と義母の選択は、人によって感じ方が異なるかもしれない。しかし直哉の仕打ちに執着せずお互いが幸せになるために立ち向かうふたりの姿は、きっとあなたをポジティブな気持ちにさせてくれるだろう。
