子どもがいるけど自分の時間もしっかり楽しむ。「こうあるべき」に縛られない日々は、子育てに悩む人に元気をくれる【書評】
公開日:2025/11/19

子どもを慌ただしく送り出した後はひとりの時間に向き合って、そして家族との時間も大切にする。そんな日常生活を描いた『いってらっしゃいのその後で』の続編が『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』(ツルリンゴスター/KADOKAWA)だ。前作からさらに成長した子どもとそれを見守る親の、なんでもないけど愛おしい日々の瞬間を描いたコミックエッセイである。
小さい子どもがいる生活で、親は自分を中心に考えることは不可能だ。しかし主人公は、心は気ままなひとり暮らしで自分らしさを忘れずにいようと、世間で言われている「こうあるべき」に縛られない生活を実践。そして続編となる本作では、3人の子どもが全員小学生になり、引っ越しや仕事の変更を経た一家の日常と成長が綴られる。
「家族でUNOをしたこと」「長男がごはんを作った日」「人形がしゃべるとかやめてと言われた夜」。大きな出来事ではないが、子どもの成長した姿に一喜一憂したり、ずっと覚えておきたい瞬間が訪れたりするのが子どものいる生活だ。フルカラーでみずみずしく描かれる日常の欠片たちは、読む人を自然と笑顔にしてくれる。
子どもを送り出した後、ひとりの時間を過ごしながらもふと子どもたちの学校生活に思いを馳せる。帰ってくるころには、そろそろだなと思い「ただいま」を待ちわびる。温かな眼差しで綴られるこの物語を読むと、家族の日常というものをこの上なく愛おしく感じさせてくれるので、自分もその一瞬一瞬を何かしらの形に残しておきたい、と思わせてくれるだろう。
正解がない子育ては迷いや不安はつきもので、落ち込んだり悲しくなったりすることは多い。そんなときに本書を開くと、完璧じゃなくていい、子どもたちと成長していけばいいと優しく背中を押されるはずだ。
文=ネゴト / Ato Hiromi
