「この板、いったい何なんだろな~?」懐かしさと優しさが滲む4コマ『敬老』【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/11/10

 敬老の日の一場面を描いた4コマ漫画『敬老』。お年寄りを喜ばせようと考えた主人公は、今ではほぼ使われなくなったフロッピーディスクを片手に、「この板、いったい何なんだろな~?」と首を傾げてみせる。

 すると、偶然通りがかった高齢男性が「ホホ、今の若い子は知らんか!」と目を輝かせ、懐かしそうに当時の思い出を語り出した。

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 主人公のさりげない気遣いがきっかけで、世代を超えた会話が生まれた瞬間だ。敬老の日の意義を改めて考えさせられると同時に、時代の移り変わりをも実感させられる一幕である。

 世代間のギャップに着目した演出が光る本作は、X(旧Twitter)を中心に人気となり、4万以上のいいねを獲得。本作をはじめ、さまざまなテーマの4コマ漫画を投稿している作者・留々家(@ruru_ie)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

描きたかったのは、世代の差を感じた瞬間の少し切ない気持ち

ーー4コマ漫画『敬老』を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 主観ではありますが、Xでは忘れたころにフロッピーディスクについてのポストが流れてくる印象があります。例えば「最近の子はフロッピーディスクを知らないらしい」とか「アプリケーションの保存アイコンとして表示されているものが何か知らないらしい」、あるいはフロッピーディスクの画像を貼って「これが何かを知っている人RT!」といったものです。

 自分も含め、ある世代の人々には、フロッピーディスクの話題には反応せずにはいられない気持ちがあります。そのことを面白く思い、4コマ漫画の題材にしました。

ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはどこですか。

 本作はフロッピーディスクに反応する人を揶揄するような内容でもあるので、絵面を明るくして、ギスギスした雰囲気にならないように意識しました。

ーーご自身にも、このように昔のアイテムや思い出話で世代間のギャップを感じたり、逆に共感したりした体験はありますか?

 フロッピーディスクやビデオの話をする機会は、実際にはあまりありません。でも、戦隊ヒーローや仮面ライダーなど、毎年のシリーズもののコンテンツの話題になると、子どものころに何を見ていたかによって世代の差を強く感じることがあります。そうした瞬間に、「あっ、この人、自分よりずっと若い……」と、少し切ない気持ちになることが多いです。

ーー本作のほかにもオリジナルの4コマ漫画を多く描かれていますが、ユニークなアイデアの数々はどのように生まれるのでしょうか?

 以前は通勤中などにネタを考えるようにしていました。ただ、漫画を描くのが遅いので思いついたネタが消化しきれずに溜まっていってしまい、今では特に意識してネタ出しはしていません。

ーー4コマ漫画を描く面白さや表現の魅力は、どのような点にあると思われますか?

 4コマ漫画のもとになるアイディアにも、いろいろな複雑さのものがあります。複雑なアイディアであれば、4つのコマに収めることが難しく、単純なアイディアであれば、コマが余ってしまいます。

 そうしたときに、複雑なアイディアであれば、最低限何を描けば、読み手にオチを理解してもらえるか。あるいは、どのような言葉選びをすればセリフを切り詰められるかといった点を工夫します。一方、単純なアイディアであればさらにひねりを加えて、4コマに足る複雑さの筋にします。あるいは、説明を増やして読み手がより円滑にオチを理解できるようにすることもあります。

 このように、絵やセリフを4つのコマにどのように配置すればアイディアを最大効率で伝えられるか、といったパズル的な楽しみがあると考えています。

ーー今後描いてみたい4コマ漫画のテーマやエピソードはありますか?

 前回のコミティア(同人誌即売会)で、妖怪を題材にした4コマ漫画をまとめた同人誌を出したところ手ごたえがありました。なので、今度は都市伝説やSFといったテーマでも同人誌を出したいと思っています。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 2025年11月にいくつかの同人誌即売会に参加します。同じアイディアを4コマ漫画とショートショート(小説)の両方で表現する同人誌を出す予定です。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 個性が出にくく、また次の投稿への引きもない4コマ漫画というジャンルで、私の漫画を楽しみにしてくださっている方の存在は、とてもありがたいです。これからもよろしくお願いします。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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