泣きながら「治れ」と何度も祈った日々…重病になった愛猫との残された時間、飼い主として何をしてあげるべきかを教えてくれる【書評】

マンガ

公開日:2025/11/29

世界一幸せな飼い主にしてくれた猫』(ねこゆうこ/KADOKAWA)は、ガンを患った愛猫の最期とその後の出来事について、飼い主夫婦の視点から描いた作品。

 子猫のときに保護し、それ以来ずっと夫婦と一緒に暮らしてきた愛猫・ちゃーにゃん。15歳になったころ、これまでより食欲がなくなったため口の中を調べてみると謎の出来物を発見。動物病院で検査を受けた結果、それは当初想定されていた口内炎ではなく、悪性腫瘍「ガン」であることがわかった。

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 外科手術? 抗がん剤? それとも……。治療法を巡って思い悩む飼い主夫婦の願いはただひとつ、愛猫に最期の瞬間まで幸せであってほしいということ。結果、夫婦が最終的に選んだのは延命ではなく、自宅での治療だった。家族として過ごすかけがえのない時間が少しずつ、けれど確実に終わりへと近づいていく。

 本作では、言葉を交わすことのできない猫の治療に伴う困難の数々がありのままに描かれている。病気が発覚してからは、夫婦は愛猫のために可能な限りの手段を尽くし、日々試行錯誤を重ねる。

 不安で居ても立っても居られず、愛猫の体に手を当てて「治れ」と泣きながら祈ったことも。それが奇跡を望むような行為であるとわかっていても試さずにはいられない、苦しい状況が続く。

 けれど、ちゃーにゃんが夫婦にくれたのは、決してつらい思い出だけではない。寄り添ってくる温かい体。見つめてくる瞳。思い出すたびに心が安らぐ穏やかなひととき。闘病期間を含め、ちゃーにゃんと過ごした時間のすべてが、夫婦にとってかけがえのない宝物だったのだ。

 生き物を飼うとはどういうことか、そして、いずれ訪れる別れのとき、飼い主としてどう向き合うべきなのか。その答えが詰まった一冊だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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