高校生の娘が連れてきた交際相手が親と同世代!? 母親の直感が鳴らす警鐘と、本当の愛と信じる娘の行く末は?【書評】

マンガ

公開日:2025/11/21

娘が23歳年上の彼氏を連れてきました』(蟹乃まよ/KADOKAWA)は、タイトルの通り、高校生の娘が連れてきた交際相手が親と同世代という、親としては相当複雑な気持ちになる出来事を描いたコミックエッセイだ。恋や愛はどこまでが純粋で、どこからが罪なのかと鋭い問いを突きつけてくる。

 主人公はシングルマザーの優子。彼女の一人娘・美月は、中学時代にストーカー被害を受けて以来、男性不信に苦しんできた。そんな美月が「好きな人ができた」と打ち明けたとき、優子はようやく娘が笑顔を取り戻せたことに安堵する。だが、その相手が23歳年上の男性だと知った瞬間、胸の奥に冷たいものが走る。しかもその男は、かつて美月が通っていた塾の講師で、高校生の教え子に手を出した可能性があるのだ。

advertisement

「まともな男が、18歳になったばかりの娘に本気で恋をするはずがない」。母としての直感が警鐘を鳴らす。年の差恋愛を否定するつもりは一切ない。それでも、言葉の端々に感じる違和感を見過ごせなかった優子は娘を必死に止めようとする。しかし、愛を信じたい美月との間に生じた溝は深く、すれ違いはやがて悲劇の始まりとなる。

 さらに美月の身の回りで不審な出来事が相次ぐように。スマホに届く謎のメッセージ、夜道で感じる視線。過去のストーカー被害の再来なのか、それとも交際相手の男が何かを隠しているのか。優子と同様に、読者にも疑念と恐怖が膨らんでいく。

 優しい言葉の裏に潜む気持ちのコントロールと、愛を装った支配。娘を守ろうとする母と、愛を貫こうとする娘というふたつの視点が交錯し、どちらの気持ちにも共感しながらも逃れられない不安に取り憑かれる。

 この娘の恋愛を「自己責任」で片づけることの危うさと、信頼や好意が知らぬ間に支配へとすり替わっていく現実の恐怖を描いた本作は、もし自分の子どもが同じ状況に置かれたら……と想像した瞬間に他人事ではなくなる。

文=ネゴト / すずかん

あわせて読みたい