すべては自由にオタ活を続けるために。オタク同士偽装夫婦の趣味まっしぐらな結婚生活【書評】
公開日:2025/12/2

アニメやゲーム、アイドルなど、いわゆる“オタク趣味”を持っている人も多いだろう。そんなオタクにとって理想ともいえる結婚生活を描いたのが『オタ婚のススメ!』(砂履シンシャ/KADOKAWA)だ。偽装結婚から始まる男女のオタクライフを、笑いとトキメキたっぷりに描くラブコメディである。
プロの漫画家を目指す東雲涼太(27歳)と、サラリーマンをしながら同人作家としても活動する小田明美(30歳)。2人はそれぞれ、周囲からの「そろそろ結婚は?」「恋人は?」という圧にうんざりしていた。そんな中で縁談をきっかけに出会い、互いの利害が一致。「自由にオタ活を続けるため」という理由から、交際0日でまさかの入籍を決意し、偽装結婚生活をスタートさせる。
それぞれが自分の「好き」を全力で楽しむ姿は、まさに“理想のオタク夫婦”。明美は同人誌制作の締め切りに追われ、涼太は漫画家としての夢を追いかける。時には相手の創作活動を助け合ったり、推しに関して熱弁をふるったり、カラオケで盛り上がったり。2人の息の合った関係に、読んでいるこちらも思わず笑顔になる。
3巻では、2人で箱根旅行に行く様子が描かれる。ドライブや旅行など初めてのことばかりで緊張していた2人だが、互いの優しさに触れながら距離を少しずつ近づけていく。トキメキ全開の恋愛ではなくとも、確かに心を通わせていく様子が心地よい。2人での時間を重ねるごとに、信頼が深まり、少しずつ感情の温度も変わっていくのが伝わってくる。
オタクである2人だからこそ、相手の“好き”を尊重しながら、互いに刺激し合える。旅行で得たトキメキを明美は創作の糧にし、涼太もその経験を漫画に反映させようとする。やがて、長らく漫画家見習いだった涼太にデビューのチャンスが訪れるなど、お互いが良い影響を与え合っていく様子に憧れを抱いてしまう。
恋愛や結婚に正解はない。オタクな2人が見つけたマイペースで自由な関係は、ひとつの夫婦のかたちとして、とても温かい。焦れったくも微笑ましい2人に、これからも目が離せない。
文=ネゴト / fumi
