DV浮気夫とともに異世界転生!? 前世にはなかった自由と尊厳を勝ち取るため、特殊能力を身につけた妻が夫との対決を決意する!【書評】

マンガ

公開日:2025/11/22

異世界転生したサレ妻ですがクズ夫を捨てて幸せを掴むことにしました』(綾束乙:原作、酒井美羽:漫画/KADOKAWA)は、夫に虐げられ続けた妻が、新たな世界で本当の幸せを手に入れる物語だ。

 主人公・美奈絵は、結婚して以来、夫・勝登の暴力と浮気に苦しめられてきた。ある日、勝登のよそ見運転が原因の交通事故で夫婦そろって命を落としてしまうが、目を覚まし、しかも異世界に転生していた。伯爵夫人・ルミナエとして転生した美奈絵は、夫の勝登は伯爵として転生していた事実を知り、前世でも今世でも彼から逃れられない現実に絶望する。

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 しかし、運命は思わぬ形で動き出す。夫の前妻の墓を訪ねたルミナエは、そこで出会った前妻の弟・エルヴァンから魔術の手ほどきを受けることに。彼の優しさに触れたルミナエは、かつての怯えていた自分を捨て、新たな世界で自由を手に入れることを決意する。

 本作の見どころは、伯爵夫人として転生した主人公が、自分の力で人生を変えようと決意する姿の逞しさだ。手を差し伸べてくれる人が現れようと、結局のところ、誰かに一方的に助けてもらうだけでは真の救いは得られない。過去の痛みや恐怖を抱えながらも、ルミナエとして新たな未来を選び取ろうと奮闘する美奈絵の姿に勇気づけられる読者は多いだろう。

 また、異世界転生ものならではの魔術の神秘や壮大な世界観にも注目だ。魔術師・エルヴァンの導きにより、美奈絵は転生者にのみ与えられる肉体強化や読心能力、未来予測などを可能にする特殊能力「ドナシオン」の存在を知る。己の能力を自覚した美奈絵は、憎き夫にどのように立ち向かうのか。権力と地位を振りかざす夫との対決は、彼女にとって単なる復讐ではない、自身の尊厳を取り戻す戦いだ。その結果やいかに。

文=ネゴト / 糸野旬

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