「刀剣乱舞無双」がコミカライズ! 国広と長義。山姥切の二振りが、戦場で気づく己の存在意義とは――【レビュー】
公開日:2025/11/15

『漫画 刀剣乱舞無双』(漫画:なしのき、原案:「刀剣乱舞ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)、発行:KADOKAWA)は、ゲーム「刀剣乱舞無双」をコミカライズしたファン待望の一冊だ。
「刀剣乱舞」とは、オンラインゲームから端を発し、アニメ、舞台、小説と数多くメディアミックスがされてきた「超」人気コンテンツ。その「刀剣乱舞」と、これまたロングヒットタイトルのアクションゲーム「無双シリーズ」が合体したのが、ゲーム「刀剣乱舞無双」である。
本作はそのドラマチックなシナリオが漫画で楽しめるということで、単行本化を待ち望んでいた方も多いのではないだろうか。
さて、本作のご紹介。
本来「刀剣乱舞」(以下、とうらぶ)では、審神者(さにわ/オンラインゲームではプレイヤー)が、本丸(本拠地)の主として存在し、その審神者に刀剣が姿を変えた「刀剣男士」たちが仕えている、というのが基本的な形だ。
しかし本作では、その重要な立ち位置の「審神者」が不在の本丸で、刀剣男士は十五振りのみおり、「時の政府」に審神者不在を隠すため、「本丸ごと漂流している」という特殊な状況から始まる。
そんな折、「時の政府」の使者・こんのすけが審神者不在の本丸へ。刀剣男士たちは、「強襲調査」として出陣を命じられる。
敵は歴史を改ざんしようとする歴史修正主義者の時間遡行軍(じかんそこうぐん)。彼らはこれまでに類を見ない計画を実行し、多くの「偽史」を生み出そうとしているという。
主(あるじ/審神者)の還る本丸を守り、漂流し続けるしかない現状を打破するため、十五振りの刀剣男士たちは、その出陣命令を受けることに。時間遡行軍が作り出そうとする「偽史」を阻み、「正史」に戻すことを任務とし、史実として展開される日本の戦場へと赴く。
アクションゲームの漫画版ということで、戦闘シーンも多く、迫力満載。しかも、どこを見ても狂いのない作画の美麗さに、かなり満足して読み進めていたのだが、それだけではなく、刀剣男士たちの関係性や心の葛藤などが、物語を通して変化していく様子もぞんぶんに楽しめた。
一巻で主にフォーカスされている刀剣男士は、山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)と山姥切長義(やまんばぎりちょうぎ)だ。
二振りは「本歌」と「写し」とされる刀剣より励起(れいき)された刀剣男士。国広は本歌である長義を研究して作刀された写しとされている。
この関係性はキャラクターの性格にも反映されており、長義は、国広を「偽物くん」と煽ったり、やや厳しい態度をみせる一方、冷静な視点で戦場を見つめて国広とうまく協力する一面もある。
一方で国広は、写しである自分にコンプレックスを抱き、ややこじらせた性格の持ち主。「隊長」という立場を命じられ、自身も困惑している様子。物語内では、そんな国広と長義の関係性を丁寧に描き、また国広の「気づき」につながる展開にもなっていた(熱い)。
豊臣秀吉や黒田官兵衛といった歴史上の人物も登場するのだが、カッコイイ刀剣男士の「おまけ」ではなく、ちゃんと本筋のストーリーに関わり、重要な立ち位置にもなっているところがさらに熱いポイントに感じた。本作から歴史に興味を持つ読者もかなり多いはずだ。
「刀剣乱舞」の世界をまた違った感覚で楽しめる本作は、「とうらぶ」ファンにも「無双」ファンにも、「どちらも気になっていたけど、ビッグタイトル過ぎて新規参入できずにいた!」という方々にもオススメできる、熱い一冊である。
文=雨野裾
