「私は“じゃない方”」超美人の親友の隣で空気扱い! コンプレックス克服のカギは“死神系男子”!? 漫画『君を映して離さない』【書評】
公開日:2025/11/21

いつも美人の親友の引き立て役であることにコンプレックスを抱く女の子が、クラスで“死神くん”と呼ばれる男の子と出会って変化していく……。そんな青春漫画『君を映して離さない』(白泉社)。マンガアプリ「マンガPark」で人気を集め、単行本の発売が決定しました。本稿では、読むと自分も元気をもらえるような、そしてもちろんキュンも満載の本作の魅力を紹介します。
失恋から始まる恋物語
主人公は犬丸りお、高校2年生。中学時代からの親友・猿方香月は、買い物に行けばスカウトされるほどの超美人です。ふたりで歩いていても男子はみんな香月にだけ声をかけ、自分は空気扱い。そんな時いつも「まるで透明人間になったみたい」と感じてしまう、りおなのでした。



でも、りおが気になっている男子・春田だけは別。春田はみんなが香月に注目している時も、りおのことを気にかけてくれるのです。些細な変化にも気づいてくれる春田はりおにとって「透明な自分を見つけてくれる」存在になっていました。
クラスで委員会決めをする日。香月が「春田が図書委員に立候補するつもりらしい」と教えてくれたことで、りおは自分も図書委員に立候補することを決意します。しかし香月が美化委員に手を挙げると、なんと春田も挙手。春田の好きな人が香月であることに気づき、りおはショックを受けます。



ショックを受けた顔を香月に見られたくなくて、りおは屋上に。するとそこで一緒に図書委員になったクラスメイト・越前谷(えちぜんや)くんに遭遇します。
入学式からずっと長い髪とマスクで顔を隠していることから、“死神くん”と呼ばれている越前谷くん。ちゃんと喋るのはその日が初めてなのに、越前谷くんはりおの気持ちを全て知っているかのように「泣いてもいんじゃない?」と一言。さらに、泣き出したりおに「俺じゃダメかな」と言ってきて……!?





共感できる主人公と愛情直球男子。そんなふたりを応援したくなる
友達ばかり注目されて、自分は……。見た目の話だけではなく、部活の実力、クラスでの人気など、誰しも一度は友達と自分を比べて落ち込んだ経験があるのではないでしょうか。特に学生時代は毎日同じ人たちと顔を合わせるから、一度感じたコンプレックスはどんどん心を蝕んでいきがちです。本作の主人公のりおは、けれど香月を嫌いになったり、距離を置こうとしたりしません。自分の心が真っ黒になってしまう前に気持ちを切り替える姿に、思春期をとっくに過ぎた筆者も「見習いたい!」と感じました。SNSで本作の感想を見てみると「久々に少女漫画にハマった」という声も多くあるのですが、自身のコンプレックスに負けない主人公の姿が、幅広い世代に本作が支持される理由なのかもしれません。
ギャップのかたまり・越前谷くんにハマる!
りおが気持ちを切り替えるきっかけをくれるのは、いつも越前谷くん。越前谷くんはずっと、りおを見ていてくれて、ほしい言葉をくれて、ストレートに気持ちを伝えてくれる。まさに自分だけの王子様です。
クラスの人気者じゃないけど、自分を持っていて、気持ちをしっかり言葉にできる。そんな越前谷くんからの言葉だからこそ、「自分は透明な存在」と思うほどコンプレックスを抱えていたりおも自分の気持ちと向き合う勇気を持てたのだと思います。
眼鏡を取ったら実はイケメン! というのは少女漫画の王道ですが、眼鏡ではなくとも越前谷くんが“死神”になっているのは実はわざと。しかしそこまでする理由はなんなのか……? 第1巻では詳しいエピソードはまだわからないままですが、その謎が明かされる日を待ちつつ、ふたりの行方を見守りたいと思います。
文=原智香
