「あんたは絶対死なない! 死なせない!」37歳で大腸がんステージ4と診断された時、家族からかけられた言葉【著者インタビュー】
公開日:2025/12/2

仕事や子育て、日々の暮らしを優先して、自分の健康を後回しにしているという人は少なくないだろう。『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(くぐり/KADOKAWA)で描かれるのは、37歳、仕事優先で生活していたくぐりさんに訪れた試練の日々だ。
ある日、くぐりさんはお尻から出血。1年前のいぼ痔が再発したに違いないと思い込んで放置していたら、大腸がんステージ4だと発覚した。
直腸を埋め尽くすほどのがんは、すでにほかの臓器にも広がっていて手術はできず、抗がん剤でしか治療ができない状態。そこからおよそ2年間、くぐりさんは治療をしながら、四国八十八ヶ所巡りをしつつ、漫画家デビューをはたす。
無治療経過観察にいたるまでの怒涛の日々を描いた本作は、がん闘病中の人やその家族だけでなく、日々を忙しく過ごしている人たちの胸にも響く。
自分の身体をもっと労わり、家族との時間を大切にしたい…。そんな思いを抱かせるコミックエッセイだ。漫画制作の裏話や闘病の日々を、作者・くぐりさんに伺った。
※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。
――37歳でステージ4の大腸がんと診断されたくぐりさん。病気がわかった時のご家族とのやりとりで、とくに心に残っている会話や言葉があったら教えてください。
くぐりさん(以下、くぐり):母が「あんたは絶対死なない! 死なせない!」とずっと言っていたことを覚えています。ほかには、抗がん剤治療を進める中で祖母が私の病気を知り、髪の毛のなくなった私をはじめて見た時、私の手をぎゅーっと握って、無言で私の顔を見つめながらボロボロと涙をこぼしたこと。その時の祖母の顔が忘れられません。
――本書ではくぐりさんとお子さんとのやりとりも描かれていました。改めてお子さんとの関わりで一番心に残っている出来事を教えてください。
くぐり:私からは子どもには病気のことを伝えてなかったのですが、ふと自分の気持ちを伝えたくなって、「お母さん長生きするからね」とつぶやいてしまったことがあるんです。その時に子どもがボロボロと泣きながら「よく言ってくれたなぁ…お母さんは長生きするんだよ…」と言ってくれたことは忘れられません。
子どもはいつも私の前ではニコニコしていたのに、私の言葉で思わず泣いてしまうほど私の病気の重さを知っていて、本当はずっと辛い思いをしていたんだと、この時はじめて知りました。子どもへの申し訳なさとか愛しさとか、「もっとこの子の側で生きていきたい」とか、いろんな思いがこみあげました。
――ご家族をはじめ、闘病を支えてくれた人たちへの思いをお聞かせください。
くぐり:がんに罹患してから「ついてないな」と思ったことはありましたが、夫や子ども、両家の両親、友だちなど、みんなが支えてくれたから「不幸だ」とは思いませんでした。
むしろ「私の周りにはこんなに私に生きてほしいと願ってくれている人たちがいたんだ」「私ってめちゃくちゃ幸せなんだな、何で今までそれに気づかなかったんだろう」と、がんに罹患しているにもかかわらず、自分は治療中の今でも幸せな状態なのだと気づかせてくれました。
支えてくれた人たちみんなに感謝の気持ちでいっぱいです。
取材・文=アサトーミナミ
