大腸がんステージ4を乗り越え、無治療経過観察に! 今、治療の日々を振り返って思うことは【著者インタビュー】
公開日:2025/12/5

仕事や子育て、日々の暮らしを優先して、自分の健康を後回しにしているという人は少なくないだろう。『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(くぐり/KADOKAWA)で描かれるのは、37歳、仕事優先で生活していたくぐりさんに訪れた試練の日々だ。
ある日、くぐりさんはお尻から出血。1年前のいぼ痔が再発したに違いないと思い込んで放置していたら、大腸がんステージ4だと発覚した。
直腸を埋め尽くすほどのがんは、すでにほかの臓器にも広がっていて手術はできず、抗がん剤でしか治療ができない状態。そこからおよそ2年間、くぐりさんは治療をしながら、四国八十八ヶ所巡りをしつつ、漫画家デビューをはたす。
無治療経過観察にいたるまでの怒涛の日々を描いた本作は、がん闘病中の人やその家族だけでなく、日々を忙しく過ごしている人たちの胸にも響く。
自分の身体をもっと労わり、家族との時間を大切にしたい…。そんな思いを抱かせるコミックエッセイだ。漫画制作の裏話や闘病の日々を、作者・くぐりさんに伺った。
※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。
――くぐりさんはがんの治療中に描かれた漫画で漫画賞を受賞されました。その時に感じたことを教えてください。
くぐりさん(以下、くぐり):受賞の連絡が来たのはちょうど抗がん剤の点滴中だったので、ヘロヘロのグチャグチャのドロドロでぐったりしていたのですが、当時の担当さんからのメールで飛び起きました。心臓からエネルギーがぐんぐん出て、体中にエネルギーが巡っていくようでした。
喜びと同時に「死んでる場合じゃない!」と心の底から思いました。
――その後、くぐりさんはご自身の余命を聞くことになります。本書では、改めて主治医に余命を聞いた時、不思議と気持ちが落ち着いていたということが描かれています。「2年半」という余命を聞いた時、どうして落ち着いて聞くことができたのでしょうか。改めて教えてください。
くぐり:病気が発覚した時や自分の進行状況を聞いた時にさんざんネットで調べていたので、ある程度どうなるか想定できたことでショックが軽減されたのかもしれません。もちろん辛くはありましたが、それまでにもう十分落ち込んでいたので、どん底期は通り過ぎていたのです。「余命どおりならなおさら時間がもったいないな、やりたいことをやっちゃおう!」と思いました。
――治療の日々を振り返って、今思うことは何でしょうか。
くぐり:痛くて辛かったこともたくさんあるのですが、それだけじゃなく、家族や周りの人に支えられてたくさん楽しい思い出も作れたので、振り返ると楽しい記憶と辛い記憶が両方セットで思いおこされます。支えてくれた人たちみんなには感謝の気持ちでいっぱいです。
取材・文=アサトーミナミ
