「みーんな味方だからね」37歳で大腸がんステージ4……闘病中、一番支えられた言葉や行動は【著者インタビュー】
公開日:2025/12/6

仕事や子育て、日々の暮らしを優先して、自分の健康を後回しにしているという人は少なくないだろう。『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(くぐり/KADOKAWA)で描かれるのは、37歳、仕事優先で生活していたくぐりさんに訪れた試練の日々だ。
ある日、くぐりさんはお尻から出血。1年前のいぼ痔が再発したに違いないと思い込んで放置していたら、大腸がんステージ4だと発覚した。
直腸を埋め尽くすほどのがんは、すでにほかの臓器にも広がっていて手術はできず、抗がん剤でしか治療ができない状態。そこからおよそ2年間、くぐりさんは治療をしながら、四国八十八ヶ所巡りをしつつ、漫画家デビューをはたす。
無治療経過観察にいたるまでの怒涛の日々を描いた本作は、がん闘病中の人やその家族だけでなく、日々を忙しく過ごしている人たちの胸にも響く。
自分の身体をもっと労わり、家族との時間を大切にしたい…。そんな思いを抱かせるコミックエッセイだ。漫画制作の裏話や闘病の日々を、作者・くぐりさんに伺った。
※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。
――37歳でステージ4の大腸がんと診断されたくぐりさん。本書では、くぐりさんの闘病、そして、くぐりさんによりそうご家族の姿がありありと描き出されています。大切な人ががんに罹患し、どうしたらいいのかと思い悩んでいるご家族は少なくないと思います。がん患者を支える家族に、まず伝えたいことは何ですか。
くぐりさん(以下、くぐり):患者の側で支える人は「第2の患者」であると聞いたことがあります。大切な人ががんに罹患した時、患者本人と同じように傷つき苦しんでおられると思います。どうか無理なさらずに、ご自分のことも大切にしてあげてください。患者にとってもあなたは大切な人のはずですから。
――くぐりさんは闘病中、ご家族や周囲の人たちからのどういう支えが一番うれしかったでしょうか。
くぐり:母が、私の味覚障害が落ち着いた時に「おいしいもの食べに行こう!」と誘ってくれたことです。元気に、いつもどおりの楽しいことを一緒にできることがうれしかったです。
――かけられて救われた言葉があれば教えてください。
くぐり:私が「メンタルどん底落ち込み期」の時に、夫がよく背中をなでながら「俺の寿命、半分分けるから大丈夫」「みーんなくぐりの味方だからね」と言ってくれた言葉が心に残っています。あと、友人に「2年半だって…」と余命の話をした時に、「そんなわけないやーん! ははははは!」とあっけらかんと大笑いされたことも忘れられません。
「そうだよね、そんなわけないよね」と、何の根拠もないのですが心がスカッと明るくなりました。これはこの友だちと長い付き合いがあって、その子の優しい性格を知っているから素直に心にスッと入ってきた言葉だったのだと思います。
取材・文=アサトーミナミ
