外からは平穏な家族。でも、夫婦間には心の距離があって…。几帳面な夫は変わらない妻を前にどうする?【著者インタビュー】
公開日:2025/12/13

専業主婦の彩子は、デザイン事務所で働く夫・裕介と、4歳の息子・大地の3人家族。仕事をこなしつつ家事と育児にも積極的な夫に不満はなく、幸せに暮らしていた。しかし彩子には最近とある悩みが。それは「夫と会話が広がらない」こと。息子が生まれたばかりの頃は夫婦でたくさん話をしていたのに、いつの間にこんな関係になってしまったの……?
夫婦の日常を妻と夫、それぞれの視点から描く『夫と会話になりません』(上野りゅうじん/祥伝社)。“完璧主義な夫と大ざっぱな妻”というふたりの行動や思考のリアルさが魅力で、つい自分を重ねながら読んでしまう。そんな本作が生まれた経緯や反響について、著者の上野りゅうじんさんにお話を伺った。
――夫・裕介についてお伺いします。描く上で参考にした人物はいますか? またご自身と似ているところはありますか?
上野りゅうじんさん(以下、上野):実際に几帳面な男性の言い分を聞いたり、夫側の意見が書かれているSNSや記事を見たりしました。一度決めたことにこだわるところや、ひとりで突っ走ってしまうところは自分にもあるなと感じます。原稿を見返しながら反省することも度々です。
――「だしの素は使わない」など完璧主義な裕介。彼の言動はどのようにして考えたのでしょうか?
上野:子どもが生まれる前後って、食事のことを勉強したり食材について敏感になったり、「より自然で体に良いものを」と考えるようになりますよね。裕介の場合、自己満足ではなく、子どものためを思っての完璧主義なんです。ただこだわりを突き通すには手間と時間と気力が必要。私自身もそれで疲れてしまうことがあったので、「こうあるべき」という気持ちが強い祐介ならこう考えそうだな……と想像しました。
――相手とのコミュニケーションを諦めて何も言わなくなる、というのもよくあるリアクションかなと思いました。なぜリアクションをしなくなるのか、上野さんはどう考えますか?
上野:特に毎日一緒にいる家族間だと、揉め事ってエネルギーがいることですよね。だから極力揉めないように、エネルギーを消費しないように……と考えた結果、「コミュニケーションを諦める」になっているんじゃないかと思いますね。何度も同じことで揉めるのはしんどいですから。
取材・文=原智香
