名もなき家事、PTA……夫には見えていない妻の負担の正体【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/12/19

 専業主婦の彩子は、デザイン事務所で働く夫・裕介と、4歳の息子・大地の3人家族。仕事をこなしつつ家事と育児にも積極的な夫に不満はなく、幸せに暮らしていた。しかし彩子には最近とある悩みが。それは「夫と会話が広がらない」こと。息子が生まれたばかりの頃は夫婦でたくさん話をしていたのに、いつの間にこんな関係になってしまったの……?

 夫婦の日常を妻と夫、それぞれの視点から描く『夫と会話になりません』(上野りゅうじん/祥伝社)。“完璧主義な夫と大ざっぱな妻”というふたりの行動や思考のリアルさが魅力で、つい自分を重ねながら読んでしまう。そんな本作が生まれた経緯や反響について、著者の上野りゅうじんさんにお話を伺った。

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――彩子が熱を出して寝込んでいる間、裕介は自分だけでも生活できることを証明しようと張り切りますが、思うようにいかず焦ります。このあたりから物語が動き出しますよね。

上野りゅうじんさん(以下、上野):子どもの世話や家事は女性がいないと成り立たない……そんなお決まりの風潮に反発したくなるのが裕介なのかなと考えました。父親であってもひとりで子どもを育てられる、それを証明したかったんだと思います。

――「名もなき家事」やPTA活動についてなど、近年専業主婦が担ってきたことが可視化・言語化される動きがあるように感じます。こういったところは本作を描く背景にありましたか?

上野:子どもが集団生活に入るといろんな役柄に追われますよね。自宅を購入したら自治会の役などもありますし。そこに取られる時間って思ったよりも多いんですよ、神経も使いますし。現代でもそこはまだまだ母親が担う場合が多くて、父親はその大変さをあまり知らなかったりしますよね。代わりに行くように頼んでみても「女性(ママ)ばかりなら女性の方がいいのでは?」と言われたりして。そのあたりはまさに自分自身が感じていたことでもあります。

――室内環境から子どもの育て方まで、夫婦の価値観の違いというのはどの家にもあるものだと思います。上野さんのご経験もこの作品に反映されていますか?

上野:夫婦ふたりの時はあんまり揉めなかったけど、子どもができてからは価値観の違いを大きく感じることが増えましたね。夫婦といえども他人同士なので価値観が違って当然、そして子どもが大事なのは同じ。……とわかっていても揉めるんですよね。その経験が本作に活きている部分はあります。

取材・文=原智香

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