荒牧慶彦「仲がいいのにぶつかるしかないって切ない」剣劇「三國志演技~曹魏」で描く、新しい曹操と袁紹の関係【インタビュー】

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公開日:2025/12/1

 この度、2025年11月28日(金)より明治座にて、剣劇「三國志演技~曹魏」が上演される。本作の企画を務め、メインキャストとしても参加する俳優の荒牧慶彦さんに本作の魅力、制作の舞台裏にまつわるインタビューを行った。

 本作は、かつて群雄割拠の時代であった中国を描く壮大な歴史書「三國志」を題材に、名将たちの切ない物語を、殺陣とアクションをメインに据えて仕上げたオリジナル演劇だ。舞台『刀剣乱舞』シリーズや舞台『ゲゲゲの鬼太郎2025』など、数多くの舞台作品に出演し、近年は作品プロデューサーとしての手腕も発揮する荒牧さん自らが企画に携わり、「三國志」好きならではのこだわりが詰め込まれた作品となっている。

 剣劇「三國志演技~曹魏」は、昨年上演の剣劇「三國志演技~孫呉」に引き続き、シリーズとしては待望の2作目となる。脚本、キャスティングから舞台美術に至るまで、荒牧さんの熱い思いが結実した本作について、重厚なお話をたっぷりと伺った。

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何よりもまずは“僕の考えた三國志”を見てほしい

──前作、剣劇「三國志演技~孫呉」の手応えはいかがでしたか?

 僕のファンの方や「三國志」を知らない方々に刺さってくれたことも嬉しかったですし、「三國志」好きの方にも好評だったことが嬉しかったですね。「三國志」という原作がある中で新たな「三國志」を描いて、「三國志」ファンを唸らせるのはなかなか難しいと思っているので。

──「三國志」ファンを唸らせるのは難しいということはわかった上で、それでも挑戦されたわけですよね。

 この剣劇「三國志演技」シリーズは、“僕が好きな「三國志」を見てほしい”というのがコンセプトにありまして、色々な方の力を借りながら僕が「三國志」を表現するならどう表現するか、という挑戦をさせていただきました。

──私も拝見しましたが、「三國志ってこんなに面白いんだ」と気づきましたし、「こんなにもドラマチックなんだ」とも感じました。

「三國志」の魅力に気づいてもらえたらいいなと思って、史実にフィクションを織り交ぜて表現しています。僕のイメージを脚本・演出の末原拓馬さんにお伝えしたところ、僕が思っていた以上にドラマチックなものに仕上げてくださって感謝しています。

──剣劇「三國志演技」シリーズは荒牧さんの発案により始動したもので、ビジュアル撮影などにも立ち会っていらっしゃると伺いました。

 僕から「三國志」をやりたいと提案して、タイトルやキャスティングも他のプロデューサーの方々と協力しながら決めていきました。脚本の打ち合わせや美術の打ち合わせなどにも参加させていただきました。もちろん、演出される拓馬さんの意見を大切にしながらですが、「こういう表現を追加してほしい」という要望は出させてもらっています。

──ご自身も出演されていて、なおかつ他の作品もあるのに、そこまで関わっていらっしゃるんですね。

 もちろん大変だなと思うこともありますが、楽しさが勝っているのでできているのかなと思います。そもそも大好きな「三國志」なので、どうしてもこだわりが強くなってしまいます。例えば、前作の「孫呉」では、劇中で主人公の周瑜(演:荒牧慶彦)と孫策(演:梅津瑞樹)が字(あざな)(注1)で呼び合っていました。最初、スタッフからは「名前が2つあってわかりづらいから『周瑜』と『孫策』と呼び合いませんか?」と提案されたんです。だけどこの2人は絶対に字(あざな)で呼び合っていると僕は思っていたので譲れなかった。

 今作でも、戦いの中で少しグロテスクな表現が出てくるんですが、それに対してスタッフからは「様々なお客様が観に来るのだから、マイルドな表現を考えませんか?」と提案されたシーンがありました。物語に没頭してもらうために取捨選択は必要だと思うんですが、僕としてはそのキャラクターの狂気を表現するために必要だと捉えていたので、ここも譲れませんでした。

──いつも以上に、荒牧さんのこだわりが詰まっているんですね。

 はい。これは「僕の考えた三國志」なので。「僕が描く三國志をまずは見てほしい」という思いですね(笑)。

※注1:古代中国において実名とは別に成人後に与えられた通称。

──荒牧さんの考えた「三國志」として、まず一作目の剣劇「三國志演技~孫呉」を作り終えてみていかがでしたか?

 最初は「ただの自己満になっていたらどうしよう」という不安もありました。もちろん、本当にやりたいものを作るということは自分自身のエネルギーにもなりますけど、観ている人がポカンとして取り残されてしまったら意味がない。お客様の反応は本当に初日の幕が開けるまでわからなかったのですが、先ほど言ったように「三國志」を知らない方にも、「三國志」を好きな方や演劇ファンの方にも好評だったことが嬉しかったです。

「三國志」の舞台を演劇として作るからには、シェイクスピアの要素も入れてみたら面白いんじゃないかとスタッフとの打ち合わせで決まって、シェイクスピアに詳しい拓馬さんに脚本・演出として入っていただくことになりました。そこもしっかりお客様に伝わっていて安心しましたね。今回の「三國志演技〜曹魏」でも「シェイクスピア」の要素が入っているのでぜひ注目していただきたいです。

主演・福澤 侑さんが持つ独特の色気。性格は猫みたいな人?

──今作の主人公・曹操役は福澤 侑さん。福澤さんにオファーした理由を教えてください。

 ここ数年、侑と一緒に仕事をすることが多くて、もっといろんな侑をファンの方に見てほしいなと思ったからです。

 そして、曹操として三國志の世界におけるいくつかのシーンをダンスで表現してもらえたら面白いだろうなと。例えば董卓軍がひどいことをしているど真ん中で侑が優雅に踊っているみたいな。そういう狂気が表現できるんじゃないかなと思っています。

──そう考えるとぴったりなキャスティングですね。もっといろんな福澤さんを見てほしいという思いから曹操役を託したとおっしゃっていましたが、荒牧さんが思う福澤さんの俳優としての魅力は何ですか?

 色気とパワーですかね。内面はめちゃくちゃ熱いんですけど、それをあまり表には出さなくて。それがあえてなのか、そもそもそういう人間なのかはわからないのですが内に秘めているものから溢れる色気と、いざやるしかないという状況になった時のパワーがすごい。その色気とパワーが僕は大好きです。

 あとは、単純にいいやつです。なんか猫みたいなんですよね。こっちが構ってほしいときはそっけないのに、ちょっと落ち込んでいるときにスッときて寄り添ってくれるみたいな(笑)

──そんな福澤さんとの“旧友”を演じるのが荒牧さんですね。曹操と袁紹の関係を、福澤さんと荒牧さんでどのように表現したいと考えていますか?

 僕が演じる袁紹は名家の生まれで位の高い人間。言ってしまえば4代にわたって総理大臣になっているような気位が高い人なんですが、今回は優しい人間にしたいなと思っています。史実では、曹操と袁紹ってバチバチなんですよ、お互いがお互いを意識して。でも僕の「三國志演技〜曹魏」では、ずっと仲良くいさせたいなと思っています。

──それはどういった思いからでしょうか?

 そっちのほうがドラマチックだからです。仲がいいのにぶつかるしかないって切ないじゃないですか。そこで「シェイクスピア」の要素が入ってくるんです。

──そのほか今作の出演者について、話せる範囲内でポイントがあれば教えてください。

 廣野凌大は、前作のときから「もし曹魏をやるなら夏侯惇をやりたい」と自ら言っていて。さらに重たい武器を持ちたいと言っていたので、重たい武器を持たせました(笑)。

 関羽は圧倒的に強く「軍神」と言われているので、殺陣がうまい尊敬できる人がいいなと思って友貴くんにお願いしました。呂布はとにかくぱっと見で強いということがわかる人にしたかったので、「顔が強い」という理由で武子直輝くんに(笑)。イケメンの呂布になりました。さらに、呂布は異民族という噂もあったので、金髪にしています。

 ちょっとトライなのは郭嘉。「変人で女好き」と言われているのですが、そこから連想して今回はメンヘラという人物設定にして、持田悠生くんに託しました。

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