暴言や悪態で精神的に追い詰め妻を支配するモラハラ夫。そんなクズどもを完膚なきまでに打ちのめす痛快ショートストーリー集【書評】
公開日:2025/12/23

仕事ができて会社や近所でいい顔をしていても、一歩家に入ると自分勝手な言動で家族を追い詰める……。そんな夫をモラルハラスメント夫=モラ夫と呼び、人知れず彼らに鉄槌を下す者たちを描いたショートストーリー集が『モラ夫解体屋 その夫、本当に必要ですか?』(かうち:シナリオ、黒野ナツ子:作画、NLLE:カバーイラスト/KADOKAWA)だ。
0歳と2歳の子どもの育児に日々追われているワンオペ妻の物語では、商社に勤め、社会的にはデキる夫のモラ夫ぶりが描かれる。趣味を優先し、平日休日問わず飲み歩く夫は、妻に対して「稼ぎがないなら僕の邪魔をするな」と言い、常に高圧的な態度を取っていたため、いつしか妻は夫とまともに話せないばかりか恐怖を抱くようになっていた。そんなある日、ママ友から託児所のあるカフェに誘われる。久しぶりにゆっくりできた妻だったが、帰り際にカフェの男性スタッフに家庭事情を見抜かれ、そして「お困リの際にはいつでもご用命ください」と謎の言葉をかけられる。かくしてこのモラ夫は大衆の前で醜態をさらし制裁を受けることになるのだが、その状況を作ったのは、カフェの男性スタッフの正体、「モラ夫解体屋」だった――。
ほかにも、結婚前に騙されて不倫を容認する内容の契約書にサインさせられた妻など、まさに絵に描いた100%クズのモラ夫たちが「モラ夫解体屋」に成敗され、妻が夫の支配から解放され再生の道を見出す痛快なストーリーが収録されている。
そしてそんな悪をくじくスカッとした物語を読みたい人はもちろんだが、作中の妻たちと同様に家庭内モラハラで苦しんでいる人にぜひ本書を手にとってほしい。理不尽な現状から脱却するために立ち上がる勇気をくれるはずだ。
文=西改
