ドローンで届くたぬきが疲れた現代人を救う。レンタルたぬきがもたらす癒しの日々【書評】

マンガ

公開日:2026/1/13

 SNS総フォロワー42万人(2025年6月時点)を誇るクリエイター・遊ハちさんによる大人気コメディ『嗚呼、たぬきはもうだめです』(遊ハち/KADOKAWA)が、待望の書籍化。「レンタルたぬき」という不思議なサービスを軸に、人間と“ゆるたぬき”たちのほのぼのとした日常が描かれる。

 物語の舞台は、仕事や人間関係に疲れ切った社会。そんな人々のもとに、ドローンで配達されてくるのは、何も事情を知らないマイペースなたぬきたちだ。震えながらも、おいしいものをもらえばムシャムシャ食べて、嬉しそうに笑う。深刻な悩みごとも、彼らののんびりと気ままに生きる姿を見ていると、なんだかどうでもよくなってしまう。

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 現実に押しつぶされそうな人間と、悩みとは無縁なたぬき。その対比こそが本作のいちばんの魅力だ。どんなに疲れていても、たぬきの抜けた表情や、のんびりとした仕草を見ているうちに、心がじんわりとほどけていく。まるで、無邪気な子どもと過ごしているような安心感がある。

 そしてこの世界には、たぬきだけでなく“天真爛漫ドブネズミ”や“いぬ”といった仲間たちも登場する。元気いっぱいのネズミ、マイペースないぬ……。それぞれが独自のテンポで生きており、ページをめくるたびに癒しの輪が広がっていく。どのキャラクターも、ちょっと抜けていて、それでいてどこか優しい存在だ。そんな動物たちの姿には、忙しい現代人が忘れかけた“のんびり生きる力”が詰まっている。

「次にくるマンガ大賞2024」(Webマンガ部門)で書籍化前にもかかわらず17位を獲得した話題作。フルカラー描き下ろしも多数収録され、ゆるくて可愛い、そしてちょっぴり切ない“レンタル日常”が楽しめる一冊だ。

 何も考えずに笑いたい夜や、心を休めたい休日にぴったり。読後には、たぬきたちのゆるい言葉がふっと浮かび、「まぁ、いっか」と思えるようになる。今日もどこかで「ああ、おしめぇだ」と呟きながら、彼らは誰かの心を癒している。

文=ネゴト / すずかん

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