10年間自分を思い続けていたイケメン幼馴染と再会したら…? 二次元オタク女子×ヤンデレ男子の愛に溢れたラブストーリー『3月の霹靂』【書評】
公開日:2025/12/5

離れ離れになった幼馴染と再会すると、小さかった彼はイケメンになっていた……。しかし彼は恋愛感情激重&ちょっぴりヤンデレ、彼女は二次元オタクになっていた!? そんな一風変わった幼馴染ラブストーリー『3月の霹靂』(池ジュン子/白泉社)。コメディチックで面白いのに、読むと誰かを大切に愛したくなる本作の魅力を紹介します。
主人公・倉敷依(くらしき・より)は交通事故による怪我が理由で留年、2度目の高校1年生。友人もできず、打ち込んでいた少林寺拳法もできず……そんな心の穴を埋めるようにひとりで推し活に励む日々を過ごしていました。そんなある日、知らない男子に推しのうちわを踏みつけられ、「万死!」と憤る依。その相手は月見里彌生(やまなし・やよい)、小さい頃に引っ越していった幼馴染・彌生君だったのです。小さくてかわいくて、いつも自分の後をついてきていた彌生君は背が伸びて、みんなが振り返るイケメンに。しかも「結婚する約束してたよね?」と言い出して……!?

困っている人をほっとけない! 愛に満ちた女子高生・依
交通事故以降すっかり自信も希望もなくして生きてきた依。しかし本来の性格は変わっておらず、困っている人を見ると放っておけません。足がまだ思うように動かないにもかかわらず、絡まれている彌生君を助けようとしたり、川に流されている子猫のようなものが入った箱を拾いに行こうとしたり……。無茶をしてまで誰かのために走り出す姿は危なっかしくもありますが、それでこそ彌生君が長年想ってきた依。家庭環境が複雑だった彌生君にとっては依こそが陽だまりのような愛情をくれる存在。だからこそ彼女を長年想っていたんだな、と納得できる魅力が依にはあります。



また依はこれまで恋愛をあまりしてこなかったのか、「恋ってなに?」状態の女子高生。しかし彌生君と再会以降、自分の彌生君への気持ちは友達や猫への感情と同じような「守ってあげたい存在」だけなのかと悩みだします。そんな徐々に彌生君を意識する姿も依のかわいらしい魅力です。
依への愛=人生 スパダリ&ヤンデレ男子の重めな愛がいい!
もともとは背も低く、泣き虫だった彌生君。しかし「よりちゃんよりおっきくなって、イジワルされないくらいすごい人」になったら結婚するという昔の約束を胸に努力した結果、高身長イケメン、文武両道、神絵師で料理も上手い完璧男子に。誰もが放っておかないスパダリです。さらに10年近くの間、依を思っていた彌生君はもちろん一途。それどころか家庭環境が複雑な上、自分のビジュアルしか見ていない女子が群がって来ることもあり「この世に自分と依以外不要!」と極論を展開する“愛が重すぎる男子”でもあります。普段の言動は行き過ぎた面白味がありますが、ここぞという時はかっこいい! 「愛が重い男子、いいかも……!」とつい思ってしまいます。

最新2巻では文化祭編がスタート。ふたりの通う高校では文化祭の時にコスプレをする習慣があり、依はもちろん推しキャラ・マキト様が登場するマンガ『宝玉学園』をチョイス。しかし交通事故の後遺症で足に傷がある依はコスプレできるキャラにも限りがあって……。依というその人丸ごとを愛している彌生君の深い愛情が溢れる第2巻。新キャラとして彌生君の叔父・寅亮も登場します。もちろん依の“マキト様愛”も炸裂。推しのいる人は必ず共感できるエピソードも満載です。
なお2巻の発売日には、同じく池ジュン子先生の『末永くよろしくお願いします』最終巻も同日発売。先日LaLaで5年半にわたる連載に幕を閉じた本作は、唯一の肉親である父を亡くした美少女・鷹司輝と、彼女の保護者となった鷹司家の書道家・葛霧清水との同居ラブコメディ。コメディ要素あり、心温まるキュンありの池ジュン子ワールドをぜひお楽しみください!
文=原智香
