腐女子を隠して非オタと結婚しました。BL熱が導くモラハラ夫との離婚への道【書評】

マンガ

公開日:2025/12/30

モラハラ夫に言えない腐ママのヒミツ』(モリコヨリ/KADOKAWA)は、モラハラ夫に耐えながらも立ち向かう主婦の姿を描いたコミックだ。

 腐女子であることを隠し、非オタの夫と結婚した主人公・つむぎ。一度は封印したはずのBL熱だったが、モラハラ気味の夫との生活の中で募るモヤモヤや孤独を埋めるように、再び彼女の中で燃え上がっていく。家族が寝静まったあと、布団の中でこっそり漫画を読む時間は、つむぎにとって唯一の癒しであり、心の支えとなっていた。

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 ある日、大学時代の友人から同人誌制作への誘いを受けたつむぎは、再び“描くこと”に挑戦することを決意。家族への思いと自分の「好き」の狭間で揺れる姿には、多くの家庭を持つ女性たちが共感を覚えるはずだ。

 夫に見つからないように原稿を隠し、夜な夜な作業を進める。その涙ぐましい努力は、ただの趣味ではなく“自分らしさ”を取り戻すための戦いのようにも映る。しかし、やがて秘密は夫に知られ、タブレットを壊されてしまう。夢を否定された瞬間の絶望は、読んでいて胸が痛む。しかしそこから意を決し、家を飛び出し、離婚届を突きつけるつむぎ。その姿からは、確かな強さと変化への意志がにじむ。

 昭和の価値観を引きずった夫との対比も印象的だ。「家のこと」「妻としての役割」を押しつける彼の言葉は、今の時代では少し古く感じられる。その“理不尽さ”がリアルに描かれることで、つむぎの孤独や葛藤がより鮮明に浮かび上がる。そして、彼女が再びペンを取ることで、“好き”を諦めない女性の姿がしっかりと刻まれていく。

 BL好きであることを隠し、相手に合わせて生きてきたつむぎが、再び自分の居場所を見つけていく。それは誰にでも通じる、ささやかだけれど強い希望の物語だ。読み終えたあとには、彼女のように「自分の好きなことを大切にしたい」と思わず感じるだろう。“趣味”が人生を救うこともある――そんな気づきをくれる一冊だ。

文=ネゴト / すずかん

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