手作り弁当からしか得られない栄養がある。友だちのために毎日弁当を作る男子高校生の成長と友情を描いた物語【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/12/8

『山田の弁当』は、いつも一緒に昼食をとっている男子高校生・山田と佐藤の友情を描いた物語だ。

 毎日コンビニで昼食をすませる佐藤に、あるとき山田がなにげなく理由を尋ねる。すると佐藤は、弁当を作ってくれる母親がいないことを淡々と打ち明けた。納得した山田は、即座に「じゃあ俺がこれから毎日弁当作ってやるよ」と宣言。佐藤は驚いたが、その申し出をありがたく受け入れることにした。

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 山田の手作り弁当は、はじめこそ焦げた炒めものや不格好な卵焼きが目立っていたが、日を追うごとに料理の腕はめきめきと上達。10日も経つ頃には、手作りのぬくもりが感じられる立派な弁当が完成するようになったのだった。

 ふたりの心温まるやりとりが話題を呼んだ本作は、X(旧Twitter)を中心に人気を集め、4万以上のいいねを獲得する投稿も。また、pixivFANBOXでは過去の短編漫画をまとめて読めるほか、山田の母親視点の外伝『山田家の弁当』も公開されている。

 作者・柏木大樹(@kasiwagidaiki)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

描きたかったのは、手料理が伝える感謝の気持ち

ーー本作を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 実は『山田の弁当』の前に『だっこ』という短編漫画を描いており、この作品にも山田と佐藤が登場するんです。ネタ帳を眺めていたときに「友達に弁当を作って売る話」というメモが目にとまり、「このネタも山田と佐藤で描いちゃおう」と思いついたのが創作のきっかけでした。

ーー特にこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

 こだわったのは、お弁当の絵ですね。男の子らしい肉っけの多いメニュー構成でありつつ、ミニトマトなど色を添える配慮もできるのが、山田というキャラクターなんです。

ーー友だちのために手作り弁当を用意する山田の優しさに心温まります。山田と佐藤の関係を描くうえで、モデルとなった人物や参考にされた作品などはありますか。

 基本的には過去に自分が見聞きした知識や物語を下地にして描いているので、山田と佐藤を描くうえで特定の誰かをモデルにしたというわけではないですね。私の短編漫画の登場人物はたいていそんな感じで、自然と思い浮かんだものを形にすることが多いです。

ーー手作り弁当のやりとりを通して、山田と佐藤の友情がより深まっていったように感じました。ご自身にも、このように手料理を通して相手との心の距離が縮まった体験はありますか。

 あります。私の場合、相手は妻と娘ですね。料理を作ってあげる、あるいは作ってもらうということは、お互いに感謝の気持ちさえあれば非常に絆の深まる行為だと思うので、とてもやりがいを感じます。手料理というテーマは短編漫画の題材として、本作以外の作品でも何度も取り上げています。

ーー読者の感想の中で、特に印象に残っているものがあれば教えてください。

 もう何年も前に描いたお話なので、コメント一つひとつの内容は詳しく覚えていませんが、当時はたくさん反応をいただけたことがとても嬉しかったのを覚えています。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 これからも短編漫画を描き続けられたら、それだけで幸せです。

ーー最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 寒いのでお体にお気をつけください。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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