漫画にデッサンは必要? デッサンを避けてきた著者が、絵画教室で得た気づきとは【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/12/8

『漫画にデッサンは必要ですか?』は、作者・渡鍋ぽんずさんがデッサン教室で学んだ体験をもとにしたエッセイ作品で、本作はX(旧Twitter)で3.3万「いいね」を獲得し、注目を集めている。

 元々デッサンは苦手だったという渡鍋さん。あるとき「長年デッサンが存在するのは意味があるからだろうし、“苦手”と避けるものこそ学べば活路が見出せるのでは?」と思い立ち絵画教室でデッサンを学ぶ決意をする。

advertisement

 デッサンを学んだことでどんな活路を見出せたのか。渡鍋さんに創作のきっかけや作品に込めたメッセージをうかがった。

なにごとも満足感の積み重ねが上達を促してくれる

ーー『漫画にデッサンは必要ですか?』を創作したきっかけや理由を教えてください。

 当時通っていたオンラインの漫画スクールで「毎日、絵日記漫画を描く」という指導があった一環で描いたものです。

 絵画教室に行ってみたら、めちゃくちゃ漫画制作に活かせる知見ばかりで驚いたので、これを描かない手はない! と思いました。

ーーデッサンでの影の効果が、漫画のカケアミ技術とリンクしていることに気付く場面がありました。他にもデッサンを通じた気付きはありましたか。

 絵画教室のデッサンでりんごがモチーフだったときのことです。そのモチーフのりんごの芯が内側から飛び出さないくらいの短さで、その通りに描いていたら先生に「芯は飛び出させて描いてください。その方が"りんご"っぽいから」と言われて衝撃を受けました。

 見たままを描くのがデッサンだと思っていたんですが、確かに飛び出させた方が「りんご」っぽい! 「人が対象物をぱっと見たとき、何をもってしてそれを認識しているのか」これは大事な視点だと気付かされました。それ以来、漫画を描くときでも、こう描いた方が「それっぽい」みたいな感覚は大事だなあと度々思いながら描いています。

ーー本作に対する読者からの感想で印象に残っているコメントはありますか。

 本作のラストで「自分の満足が積み重なって、少しずつうまくなっていく」というモノローグがあるのですが、それに対する「これは絵だけの話ではなく、いろんなことに通じるよね。私も頑張ろう〜!」というコメントが印象的でした。

 絵を描く人じゃなくても、読んだ人それぞれが自分の人生に重ねて良い方向を一緒に見てくれる。そのことを作品を通じて知ることが出来ました。このコメントをくださった方や、同じように感じた読者にとって実りあるものになれば幸いです。

ーー気に入っているシーン、台詞を教えてください。

 デッサン教室で「良く描けてる」と思った箇所を先生に自己申告したときに言われた「大事だよね、そういうの」という台詞です。

 本人にあとで聞いたら「そんなこと言ったっけ?」くらいに何気なく発していた言葉らしいんですが、そういう言葉をさらっと言えるのもまた素敵だなあと思います。

ーー本作を通じて描きたいこと、伝えたいことはなんですか?

 世の中には自分よりすごい人達もたくさんいて、つい比べちゃって落ち込んだりすることもたくさんありますが、自分の中にしかない楽しさや満足感を大事にしていってほしいなと思います。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 現在、商業連載に向けて水面下で足をバタバタさせている最中なので、連載開始が当面の目標です!

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも読んでくださってありがとうございます! また絵日記や創作漫画を描いていきたいと思うのでご縁があれば読んでやってください。

取材・文=ネゴト /

あわせて読みたい