SNS総フォロワー数500万人超えのクリエイター集団「こねこフィルム」縦型ショート動画がウケるワケ【書評】
公開日:2025/12/19

縦型ショート動画で老若男女問わず、爆発的な人気を博す「こねこフィルム」。その独自の制作スタイルは、従来の映像制作の常識を覆す「台本なし」の即興とディスカッションを核としている。役者の才能を最大限に引き出す彼らの制作哲学と、バズを生む秘密について、本書からその極意を紹介する。
※本稿は『共感と裏切りで心を掴む こねこ流「縦型ショートフィルム」の極意』から一部抜粋・編集した。
バズったきっかけは「台本なし」の即興劇
「こねこフィルム」は、映画制作の経験を活かし、シチュエーションを設定した上で、役者とスタッフ全員で現場でディスカッションし、共に作り上げていく制作スタイルをとっている。そこに演技力のある役者の芝居がのれば、最高の作品に仕上がる。
活動開始当初、動画は週2本程度の配信を想定し、初回配信までに約6本分の作品を事前に撮り溜めていた。最初の撮影では、しっかり台本を固め、綿密なカット割りを設定するという作り込んだ手法を用いていたが、皮肉にも、2本目に公開され Tik Tokで200万回再生を超える大きな反響を呼んだ『奪う男』は、撮影の合間の30分ほどの空き時間で、梅田誠弘氏と半田周平氏と「台本なしで即興的に試みたもの」だった。この作品は現場でも盛り上がり、制作者自身も心から楽しめたという。
この成功により、三野龍一監督は「台本をガチガチに決め込むのではなく、シチュエーションだけを設定し、あとは役者の芝居に委ねるという撮り方」を核とすることを決意した。この手法は、これまでの映画制作で培ってきた手法そのものであった。
監督は「脚本は鎖のようなもの」と語る理由
三野龍一監督は、「監督とは呼ばないでほしい」とメンバーに伝え、立場や上下関係を排除した環境づくりを最も重要視している。これは、現場で役者が違和感を抱きながらも「完成させなければならない」という常識や場の空気でそのまま進行してしまう状況が、クリエイティブにとって良くないと考えているからだ。
監督は、「脚本は鎖のようなもの」であり、制限があると表現している。役者が「この感情にならないと、このセリフは言えない」という状況が生まれた場合、脚本を直すべきであるという考えのもと、「こねこフィルム」では、脚本すらなくし、セリフをほぼディスカッションで決定する手法をとるようになった。脚本に頼らず、設定の中で役者たちが感じ取ったものをそのまま撮るという、ドキュメンタリーに近い方法が「こねこフィルム」のスタイルである。
役者の才能を一つの側面に「固定しない」哲学
三野龍一監督は、「こねこフィルム」の現場で自身を「監督と呼ばないでほしい」と伝えている理由の一つに、皆がそれぞれの立場や役割に縛られてほしくないという考えがあるとしている。監督の立場でありながらプロデューサーの役割も兼任するなど、マルチに活躍する人が多い現代において、俳優の仕事も芝居をすることだけではないと考えているからだ。
俳優の本来の仕事は芝居をすることだが、それはその人の一面でしかなく、もっと面白い側面や才能が隠れているかもしれない。それを、一つの側面に固定してしまうのは、あまりにもったいないと述べている。役者であっても、面白い発想や企画力、あるいは「こねこフィルム」の進むべき方向性についての素晴らしいアイデアを持っている可能性は無限大であり、そういった提案に対し、決して否定はしたくないという哲学がある。
実際にメンバーは多くのアイデアを出しており、常に作品の企画アイデアはストックされている状態だ。従来の映画やドラマの撮影では、役者が脚本に異議を唱えるには勇気が必要だと感じられてきたが、「こねこフィルム」ではそれをなくしたい。「この感情は自然か」「脚本を直したほうが良いか」といったことを俳優の方々に聞く作り方を実践してきた経験から、この現場では、役者の魅力が最も際立つのは、脚本という「鎖がない状態」であると考えているのだ。
著者
こねこフィルム
映画やドラマの現場で経験を積んだ精鋭クリエイターたちが結集し、新たな価値を生み出すプロフェッショナル集団です。2023年6月よりTikTokを中心としたSNSで毎週作品を公開し、わずか1年で総フォロワー数100万人を突破。現在ではさらに拡大し、SNS総フォロワー数は500万人超、累計再生回数25億回超を記録している。(※2025年11月3日時点)
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