アニメ化した『野原ひろし 昼メシの流儀』の公式ファンブックが登場! マンガよりも妄想の激しさが増した女性キャラなど裏話が盛りだくさん【書評】
PR 公開日:2025/12/23

国民的人気コミック&アニメ作品『クレヨンしんちゃん』。全世界で累計1億3000万部以上のシリーズのなかで異色の存在が『野原ひろし 昼メシの流儀』(臼井儀人:キャラクター原作、塚原洋一:漫画/双葉社)だ。内容はしんのすけの父・ひろしがランチタイムに昼メシを選び、食べ、語るだけ。しかしそれが多くのサラリーマンたちの共感を得たか、累計発行部数は何と80万部を突破している。また「昼メシの流儀」のひろしは、SNSでネットミームにもなっていた。
そんな本作が、2025年にTVアニメ化。このアニメ化を記念して『野原ひろし 昼メシの流儀 公式ファンブック』(双葉社)が発売になった。
アニメは好調で、放送が開始されるとオープニング映像はYouTubeで1000万回再生を記録し「クレヨンしんちゃん」公式YouTubeチャンネル内で再生数1位に。また配信のコメントは激しく盛り上がり、オンエア時にはXで「野原ひろし」「昼メシの流儀」がトレンド入りするなど、SNSを中心に大きな話題になっている。
この公式ファンブックは、そんな話題のアニメ版のデータはもちろん、その魅力と制作の裏側を深く掘り下げ、原作コミックに登場する料理のリストまでも収録。アニメ&マンガを横断した“大盛”な一冊になっているのだ。

本書は「アニメの流儀」と「漫画の流儀」という2つのセクションから構成されている。「アニメの流儀」の最初は「主な登場人物」ページ。ひろしをはじめ、原作コミックの『クレヨンしんちゃん』以上にクセが強くなった会社の後輩・川口や、おもしれー女子大生・四杉遥を紹介している。

次に「各話エピソード紹介」。1話分のエピソードを見開きで紹介するこのページは、単なるあらすじではなく、実際のアニメの画面にテキストを合わせた、フィルムコミックのような読み物になっている。“意識だけは高い”川口のおかしさがいかんなく発揮されている「ビリヤニの流儀」回や、聞こえてくるすべての言葉を自分に向けられたものだと受け取ってしまう四杉の、激しい思い込みが炸裂する「イカスミパスタの流儀」回は、ページを読むだけで笑ってしまう。たとえば、遥は妄想する頭の中で、ひろしをサラリーマンではなくメタル風バンドマン姿にまで仕立て上げてしまうのだ……。

そして、野原ひろし役の森川智之氏と『野原ひろし 昼メシの流儀』監督の西山司氏のインタビューが続く。森川氏は、渋い声で決めるシーンからギャグシーンまで本家『クレヨンしんちゃん』以上(に感じる)の熱演について語り、西山監督は、料理を実写にした理由と料理写真をアニメに馴染ませるこだわり、そしてひろし以外のキャラクターたちの出番を増やした理由や、彼らが脚本、声優、原作者の力で原作コミック以上に“激しく”なったことについて、たっぷりと語っている。たとえば、遥はマンガよりもやりすぎなくらい思い込みが激しいキャラクターに仕上がっているそうで、特に「叫び声の演技が素晴らしかった」と語っている。

「漫画の流儀」では「ひろしの顔芸ミュージアム」が紹介されている。原作コミックで見せる“とーちゃん”の多彩すぎる表情に紙幅を割いている。ネットミームにもなっているので、未読の人も「どこかで見た顔……」となるだろう。
さらに「ひろしのランチメニュー」はその名の通り、原作に登場したメニューがずらり。読めば思わず食べに行きたくなりそうで、それこそ自分のランチの参考にもなりそうだ。そして、本作のヒロイン(?)四杉遥の勘違いエピソード集ページの後はオーラス、原作コミックの漫画家、塚原洋一先生のインタビューを掲載。ここでは本作がネットミーム化している部分や、SNSでの反響についても触れられているので要チェックだ。
ふと考えてみると、中高年の男性たちは日々どんな昼メシを食べているのだろうか。会社勤めだった私にも経験があるが、仕事に追われて疲れ切って、今日何を食べるかさえ判断できない日もあった。「昼メシの流儀」は、そんな私たちの昼メシ選びを軽やかに後押ししてくれるはずだ。きっとあなたは、しんのすけもみさえも知らない野原ひろしに笑わされ、腹を鳴らす。そして、ひろしの生き様にちょっとだけ背筋を伸ばすのだ。
読み終えた瞬間、思わず「昼メシ行くか」となる――そんな勢いと旨みの詰まったアニメとマンガを、より楽しむための“最強の箸休め本”。ぜひ手に入れてほしい。
文=古林恭
