小学生と同じ身長でも大人! 見た目で判断される苦しさに立ち向かう『133cmの景色』【著者インタビュー】

マンガ

更新日:2025/12/18

 病気の影響で小学生の頃に身体の成長が止まってしまった吉乃華・25歳。小学生の時と同じ身長のまま大人になった華は、年齢と外見が乖離していることで「見た目がもたらす生きづらさ」に直面してゆく。華だけではなく、顔面麻痺を患っているために無愛想と思われてしまう同僚の岩見や、身長が高いことを気にする直美など、登場人物それぞれが抱える悩みを通じて、気づきと勇気をもらえる『133cmの景色』(ひるのつき子/新潮社)。著者であるひるのつき子さんに、本作を描いたきっかけや伝えたいテーマについて話を聞いた。

――『133cmの景色』を描こうと思ったきっかけについて教えてください。

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ひるのつき子さん(以下、ひるの):担当編集さんに「次回作でやってみたい題材はありますか?」と伺ったところ、華と同じような病気を持つ海外の方のインタビューを紹介していただいて。それを見たことがきっかけです。

――本作の紹介文には「生きづらさの物語」とありますが、ひるの先生としてはどんなことを描こうと思ったお話でしょうか?

ひるの:そうですね、連載が始まったとき「見た目の生きづらさの物語」という紹介文をいただきました。私自身としてはジェンダーロール(社会や文化によって性別ごとに期待される特定の役割や行動様式)やジェンダーバイアス(性別に基づいて役割や行動、能力を固定的にとらえ、偏見や差別を生み出す無意識の思い込み)に比重を置いていて、その中に外見への偏見などが内包されるようなイメージです。例えば「小さいことはかわいくて女性らしい」「身長が高くて筋肉質な身体は男らしい」といった考えはルッキズムでもあるし、ジェンダーバイアスでもありますよね。

――なるほど。ルッキズムは特に昨今よく聞く言葉だと思うのですが、本作の中でルッキズムに言及していこうという気持ちもあったのでしょうか。ルッキズムについて思うところはありますか?

ひるの:華の悩みが外見に関わるものだったので、自然とルッキズムへの言及につながりました。「好み」についてはそれぞれ自由に持っていいものだと感じています。でも、「それ以外は無価値だ」という考え方をしたり、「自分が持つ美しさの基準こそが唯一の正解」と思い込んでしまったりすると、他人だけではなく自分自身も苦しめる原因になると思います。現実には美の基準というものは確かに存在していて、私たちはその中で育ち、他者を判断したりされたりしながら生きているので、完全に切り離すのはとても難しいことですよね。でも、そうした考えはなるべく手放していけたらいいなと感じています。

取材・文=原智香

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