「その人なりのルールや大事にしたいものがある」ザマァ展開にはしない、優しい眼差しで共感を呼ぶ『133cmの景色』【著者インタビュー】
公開日:2025/12/26

病気の影響で小学生の頃に身体の成長が止まってしまった吉乃華・25歳。小学生の時と同じ身長のまま大人になった華は、年齢と外見が乖離していることで「見た目がもたらす生きづらさ」に直面してゆく。華だけではなく、顔面麻痺を患っているために無愛想と思われてしまう同僚の岩見や、身長が高いことを気にする直美など、登場人物それぞれが抱える悩みを通じて、気づきと勇気をもらえる『133cmの景色』(ひるのつき子/新潮社)。著者であるひるのつき子さんに、本作を描いたきっかけや伝えたいテーマについて話を聞いた。
――2話には相手の印象に残らないことで悩む金子という女性が登場します。金子は悩みのあまり、華や岩見に嫌味な物言いをしてしまいますね。
ひるのつき子さん(以下、ひるの):金子に限らず、この作品では「“嫌な言動をしたキャラクターに酷い仕返しをしてすっきりする”というアプローチはあまりしないようにしよう」と最初から決めていました。どんな人にもその人なりのルールや大事にしたいものがあります。そして、思いがけず偏見を持つこともあればそれを自覚できる可能性もある。そういった多面性を大事にしています。
――なるほど。本作は主人公だけでなく、多くの登場人物が主体になってお話が進んでいきますよね。そこに共感が集まるからこそ本作は人気なのだと感じます。それぞれの人物の心情や行動は取材などで生まれたものですか?
ひるの:取材も行っていますが、エピソードについては自身や担当編集さんの経験、身の回りの人達の体験談など様々なものを参考にしています。キャラクターの主張=自分の主張という意識はあまりないですね。あの世界の中で生きてきたキャラクターが、それぞれの経験を経て得た信条や考えの上で出てきた発言として扱うようにしています。
取材・文=原智香
