「自分の子どもが一番大事」という気持ちは同じ。誰もが「過干渉な親」になり得る【著者インタビュー】
公開日:2025/12/22

小学生・春子に起きた人間関係のトラブルが反響を呼んだ『家族全員でいじめと戦うということ。』の続編として、もう一つの視点から描かれたコミックエッセイ『「お母さんの言うとおり」にしてきたのに 家族全員でいじめと戦うということ。 サキコの場合』(さやけん/KADOKAWA)が、2025年11月に発売された。
前作で、春子のいじめの原因を作ったとされるサキコ。本作では、モンスターペアレントのレッテルを貼られた母に守られ、「お母さんの言うとおりにすれば大丈夫」という言葉に縛られながら生きる、サキコの物語が描かれている。「愛情」の多様な形、そして、視点が変わることで人への印象が変わることを鮮やかに描いた本作の制作背景を、さやけんさんに伺った。
――サキコのお母さんなりの「優しさ」や「愛情」を描く上で、意識されたことはありますか?
さやけんさん(以下、さやけん):おそらく多くの親御さんも、根底の想いは同じ。「自分の子どもが一番大事」と多くの人が思っているけど、サキコのお母さんは、環境が悪かった。夫や義母から評価を得られなかったり、子どもに不遇が起きすぎてしまったり。それを繰り返して「闇落ち」ではないですけど、愛情の形が少しずつ変化していくことは、誰しも起こり得ると思います。
――本作を描きながら、さやけんさん自身も共感する部分はありましたか?
さやけん:自分も、サキコのお母さんのようになるかもしれない、と思いますね。そう自覚して、気をつけようと。
昔の話ですが、息子が保育園に通っている時に、先生から「お友達が、息子さんの靴に泥を入れてしまって」と報告と謝罪を受けたことがあったんです。聞けば日常的に悪戯をされていたとかで。息子はそれほど気にしていない様子だったのでこちらも気にしないようにしていたのですが、ある日、制服のボタンが全部取れて帰ってきて。息子に聞いたら「その子にちぎられた」と。
これはそろそろ黙ってはいられないなと思い、先生に確認していただいたところ、ボタンを外したのは実は息子本人だったということが判明しました。息子は幼心に、「いつも悪戯をしてくる子のせいにしたら、自分は怒られない」と考えたんでしょうね。
その時、「子どもの言うことを鵜呑みにして、感情的になってはいけない」と強く心に刻み込みました。ちなみにそのお友達とは、その後、特にトラブルもなくとても仲良く遊んでいました。現在の創作活動やその後の考え方にも大きな影響を受けた、教訓にもなった思い出です。
取材・=松本紋芽
