「お母さんの言うとおり」という呪縛のような言葉。過干渉で子どもを縛り付ける母は変わることができるのか?【著者インタビュー】
公開日:2025/12/23

小学生・春子に起きた人間関係のトラブルが反響を呼んだ『家族全員でいじめと戦うということ。』の続編として、もう一つの視点から描かれたコミックエッセイ『「お母さんの言うとおり」にしてきたのに 家族全員でいじめと戦うということ。 サキコの場合』(さやけん/KADOKAWA)が、2025年11月に発売された。
前作で、春子のいじめの原因を作ったとされるサキコ。本作では、モンスターペアレントのレッテルを貼られた母に守られ、「お母さんの言うとおりにすれば大丈夫」という言葉に縛られながら生きる、サキコの物語が描かれている。「愛情」の多様な形、そして、視点が変わることで人への印象が変わることを鮮やかに描いた本作の制作背景を、さやけんさんに伺った。
――タイトルの「お母さんの言うとおり」という言葉は、どのように決めたのでしょうか?
さやけんさん(以下、さやけん):「お母さんの言うとおり」という言葉自体、あまり良い印象ではないですよね。だから、最初は呪縛のように思えるかもしれない。この意味を最後に覆したいと考えていたので、プロットの段階から「お母さんの言うとおり」をタイトルにしていました。
その後、担当編集さんに、内容をわかりやすくするための要素をタイトルに盛り込んでもらったんです。
――サキコだけでなく、お母さん自身の変化も丁寧に表現されています。制作時に意識したことはありますか?
さやけん:サキコちゃん自身の結末はほぼ決まっていたのですが、お母さんをどうやって救うかは悩みました。毒親や家族の不和をテーマにした作品って、たいていお母さんの幸せや救いが描かれにくい気がしていて。でも私は、お母さんが救われていく部分を絶対に描きたかった。
現実には難しいかもしれませんが、自分の手で描かれるキャラクターたちには、どうか幸せが待っていてほしいです。
――作品全体を通して、仕返ししてスカッとするような「復讐系」とはまた違う印象があります。
さやけん:普段から、相手には事情があるんじゃないか、と考えるタイプなんですよ。車で割り込まれても「あの人は、子どもが生まれるから急いでいるのかも」と。それに……人を憎む方が、心も体もしんどいですからね。
取材・文=松本紋芽
