子どもは、純粋ゆえに残酷。いじめの詳細を、あえて描かなかった理由【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/12/25

 小学生・春子に起きた人間関係のトラブルが反響を呼んだ『家族全員でいじめと戦うということ。』の続編として、もう一つの視点から描かれたコミックエッセイ『「お母さんの言うとおり」にしてきたのに 家族全員でいじめと戦うということ。 サキコの場合』(さやけん/KADOKAWA)が、2025年11月に発売された。

 前作で、春子のいじめの原因を作ったとされるサキコ。本作では、モンスターペアレントのレッテルを貼られた母に守られ、「お母さんの言うとおりにすれば大丈夫」という言葉に縛られながら生きる、サキコの物語が描かれている。「愛情」の多様な形、そして、視点が変わることで人への印象が変わることを鮮やかに描いた本作の制作背景を、さやけんさんに伺った。

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――ご友人の実体験をもとに制作されたとのことですが、本作で描かなかったエピソードはありますか?

さやけんさん(以下、さやけん):いじめ自体の、具体的な内容はあまり描かないようにしていました。子どもって純粋ゆえに残酷ですし、そこの表現に私もうっかり行ってしまいそうになるんです。

 でも、いじめの詳細を描きすぎてしまうと、ただただかわいそうなだけの話になってしまう。本作のテーマである、“家族”を中心に描くことを意識しました。

――制作時に、最も大変だったことは何ですか?

さやけん:50ページほど削ったことです。主人公・サキコのお母さんが公立の学校を批判したり、学校に乗り込んでいったりするシーンが繰り返されているようなところを、2回ぐらいの表現に凝縮して。放っておいたら、どんどん描いてしまうんですよ(笑)。悩みながらなんとかコンパクトにしました。

――主人公のサキコや友人の春子に鋭い言葉を向ける同級生・風(ふう)と来夢(らいむ)の姿も印象的です。

さやけん:実際にいじめに関わっていた複数人の要素を、ふたりに集約して描いています。実はあのふたりがどうなったか、というのも私の中では決まっているんですよ。何らかの形で、いつかお披露目できたらいいなと思っています。

取材・文=松本紋芽

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