「家事は女の仕事だろ?」その一言で揺らぐ新婚生活! 年の差夫婦がぶつかった「価値観の壁」をふたりは乗り越えることができるのか?【書評】

マンガ

公開日:2025/12/24

家事は女の仕事だろ? 共働きなのに何もしない20歳上の夫』(うみこ/KADOKAWA)は、年の差婚で始まった結婚生活が、価値観の相違によって揺らいでいく様子を描いた物語だ。

 シングルマザーの家庭で育った主人公・りこは、頼もしさと安心感にひかれて、20歳年上の夫・一郎と結婚する。しかし、互いに働いているにもかかわらず一郎は家のことを何もせず、新婚早々にすれ違いが表面化。さらに亭主関白ぶりがエスカレートしていきモラハラ発言を繰り返す一郎に、りこの頭には「離婚」の2文字がよぎってしまうのだった。

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 本作の見どころは、夫婦のリアルなやり取りの描写だ。一見優しく包容力のある一郎は、結婚を機に突然態度を変え「家事は君の仕事」と当然のように言い放つ。その言葉に憤りを覚えつつも「私もわがままだったのかも」と自分を納得させようとするりこの姿が痛々しい。だが、彼女もただ黙って耐えるだけではない。自分の気持ちや状況を冷静に見つめ直し、時に怒り、時に諦めかけながらも、夫婦という関係を対等なものにしようと努力と葛藤を重ねていく。

 また、単なる性別の違いや年齢差の問題にとどまらず、育ってきた環境が家族観や価値観にどんな影響を与えているのかをしっかり描いているのも印象的だ。会話のひと言ひと言が刺さり、どの家庭にも起こりうる問題として胸に迫ってくる。家族内で価値観のズレに悩んだことがある人なら共感できるだろう。

 本作が問いかけるのは「夫婦は対等か」という根源的なテーマだ。優しさの裏に潜む無意識の偏見やすれ違いは、今後の生活を左右しかねない切実な問題である。今まさにパートナーとの関係に悩んでいる人、そしてこれから夫婦になろうとしている人に手にとってほしい作品だ。

文=坪谷佳保

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