裁縫教室で男子高校生の秘めた才能が開花!? 独創的すぎるデザインセンスが笑いを巻き起こす【漫画家インタビュー】
公開日:2025/12/18

『男子3人でお裁縫教室に行くだけの話』は、とある裁縫教室での一幕を描いたコメディ漫画だ。
ある日の放課後、連れ立って帰宅しようとしていたら、英語担当の柏木先生に呼び止められた仲良し男子高校生3人組。ひょんなことから3人は先生の代わりに、裁縫界のカリスマが10年ぶりに開く裁縫教室に参加することに。
その日のテーマは、飾りも柄もすべて自由のオリジナルバッグ作り。創作魂に火がついた3人は、教室中の視線を一気にさらうほどのインパクト大なデザインを生み出す。すると、3人のセンスに対抗心を燃やした他の参加者も、負けじと大胆なアイデアを形にし始めて——。
作中に登場する独創的すぎるバッグのデザインが話題を呼んだ本作は、X(旧Twitter)を中心に人気を集め、5万以上のいいねを獲得。作者・もりみや仁(@ssm_yarukihanai)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
長期連載している自主制作の漫画をずっと描き続けたい
ーー本作を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。
この漫画は、自主連載している漫画のシリーズ『学校のなんか』のエピソードのひとつとして制作しました。
長期連載を続けていると新規の読者をどうやって獲得するかが悩みになりますが、いつものキャラクターメインで話を進めると、事前知識がなければ伝わらないような内輪ネタがどうしても増えてきてしまいます。そこで、彼らの背景をあまり知らない「第三者視点」で物語を始めれば、『学校のなんか』を知らない人でも同じ目線になれて、新規の読者でも入っていきやすいのではないか? と考えたのが制作の出発点です。
そこから「誰と組み合わせると面白いか」を考えた結果、男子高校生たちと「お裁縫教室のマダムたち」という組み合わせにいきつきました。ちなみに、作中に登場する柏木先生はシリーズの初期に少しだけ登場したキャラクターです。昔からの読者の方にもニヤリとしてもらえたらという下心もありました。
ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはどんなところですか。
こだわったのは、柏木先生の部屋と部屋着の描写です。柏木先生が家では自分を解放して楽しんでいる様子を表現したつもりです。
ーー作中に登場する独創的なバッグのデザインに楽しませていただきました。これらのデザイン案は、どのような発想から生まれたのでしょうか。
「HELL」のロゴが入ったバッグは、元々このキャラクターが中学生男子っぽいファッションセンスを持っていることから連想しました。また、タローの顔をデザインしたバッグは、作ったキャラクター自身がタローを(友人として)大好きであることから生まれたものです。
一方、「右腕」をデザインしたバッグについては、あまり面白くなりすぎると由美子のオチが霞んでしまうので、ちょうどいい塩梅にするのに苦戦しました。絵が得意ではないキャラクターが作ったという設定なので、ある程度下手ではあるだろうけれど、あまり下手なデザインにするとむしろそちらのほうが笑いを取ってしまう。このバランスを取るために、何度も描き直しています。

ーー特に気に入っているシーンを教えてください。
最後の方に柏木先生が「裁縫教室で右腕作る事あるんだ」と静かに驚いているシーンが気に入っています。無いだろ、と思うので。
ーー読者の感想で印象に残っているものを教えてください。
このエピソードは多くの人に読んでもらえたので、「このシリーズを昔読んでた!」という人たちに再び注目してもらえたのが印象深かったです。
私がインターネットで漫画を描き始めた頃は、今のようにSNSが主流ではなく、読者の方の反応が可視化されにくい時代でした。「本当に読んでくれている人は3人くらいしかいないのでは?」と疑っていたほどです。実際は、もっと多くの方が読んでくださっていたようです。
ーー本作の他にもさまざまな学園コメディを描かれていますが、ユニークなお話の数々はどのように生まれるのでしょうか?
自分ではユニークに描けているという自信はあまりないのですが、エピソードを考えるときは、読んだ本や人から聞いた話から発想を膨らませたり、日常の「あるある」ネタをひとひねりしてみたりすることが多いです。また、ネタに困ったときのために、面白いと感じたことはノートに記録するようにしています。
ーー今後の展望や目標を教えてください。
今後の展望は、この『学校のなんか』というシリーズをこれからもずっと描き続けることですね。目標は、もっと漫画を面白く描けるようにスキルアップすることです。
ーー最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
いつも本当にありがとうございます。無料でいくらでも漫画が読めるこの時代に、『学校のなんか』を読んでもらえることは決して当たり前のことではないと思っています。自分の時間を使って感想や絵を書いてくれる人がいたり、中には聖地巡礼旅行をしてくれる人もいたりして、とても励みになっています。
とはいえ、読者の方は私を喜ばせるために活動しているわけではありません。ですので「何かしたい」「また読みたい」と思ってもらえるような面白い話を作り続けられるよう、これからも頑張ります。
