敵の組織も「完全週休2日制」を導入?『生理ちゃん』作者の最新作は働き方改革で戸惑うヒーローコメディ『首領ちゃん』
PR 公開日:2026/1/22

休日は社会人にとって何よりの楽しみだ。休日の前日には「休みに何をしよう」とワクワクしてしまって仕事に身が入らなくなることさえある。しかし、この感覚は社会人として何カ月、何年も過ごすうちに身についたものだろう。では、社会人になったばかりの頃は、どうだったか。実は戸惑っていたように思う。
『生理ちゃん』(KADOKAWA)の作者・小山健氏の最新作『首領ちゃん』(講談社)は“休日初心者コメディ”である。休みなく働いてきた主人公・峰水ミネタが、突然完全週休2日制の環境に置かれ、“空白の2日間”に右往左往する様子を描いた作品だ。ミネタは、はたして休日をうまく楽しめるのだろうか。
ちなみに彼の仕事は、街の平和を守り敵と戦う“ヒーロー”であった。
■ヒーローも敵の組織も“完全週休2日制”ってどういうこと?


物語の舞台は、秘密結社「ブラックデビル」によって侵略されている日本。峰水ミネタは、“職業ヒーロー”「パワードマン」として日夜この侵略に立ち向かっていた。

そんなある日、ミネタのもとに敵対する「ブラックデビル」が“完全週休2日制”を導入したという情報が届く。なんと、それに伴ってヒーロー側も完全週休2日へ移行することになる。ミネタは、突如手に入った「空白の2日間」に戸惑う。休みなく戦い続けてきた彼は、休日に何をすればいいのか分からなかったからだ。
さらに、彼と同居している“訳アリ”の少女・ニコンが、ここぞとばかりにかまってくる(彼女の秘密はぜひ読んで確かめてほしい)。かくしてミネタは、休日とは何かを学ぶことになるのだ。


最初の休日、ミネタとニコンは彼女の熱烈なリクエストで「いちご狩り」に出かけた。そこでミネタは運命の邂逅をはたす。「ブラックデビル」幹部・パーマネントが、息子のたっくんを連れて「いちご狩り」に来ていたのだ。

すぐ開戦……とはならない。今日は休日だからだ。子連れとしては新米のミネタは、先輩風をふかすパーマネントに「いちご狩り」について、上から目線で注意されて一触即発に。なお、たっくんとニコンは仲良しになった。
この日を境に、ミネタの休日は戦い以上に厄介な時間となっていく。
■休日を楽しみたいあなたへ捧げる物語。


「ヒーローも敵の組織も週休2日」という設定から始まる物語。侵略者とヒーローが、戦いより先に労働条件が整うというのは、皮肉めいたおかしみがある。もちろん令和の現代社会にも通じている。育児や労働についての常識や考え方がヒーローvs敵の組織という対立構造と交差し、奥行きのある作品になっている。

また、本作は秘密結社と戦うヒーローが主人公だ。ただミネタは戦う以外は不器用で、読んでいて笑顔になるし、謎めいた少女ニコンとの距離感の変化にほっこりもさせられる。ミネタの生真面目さと休み慣れないがゆえの戸惑いと、ニコンの天真爛漫さが絶妙なあたたかみを感じさせるのだ。
考えてみれば、忙しすぎると休日を充実させることは難しい。結局のところ、疲れを癒やすだけで終わってしまうからだ。もちろん、余裕がないと休日前に「何をしようかな」とワクワクする気持ちすら湧いてこない。
世の親たちはどうだろうか。本稿のライターも経験があるが、基本的には子どものやりたいことを優先し、行きたい場所へ連れていきたいと考えるものだ。楽しそうな遊びや場所を見つければ、つい予定を立てたくなる。だが、第1話のいちご狩りのように、子どもとのお出かけが計画通りに進むことのほうが珍しい。
繰り返すが、休日を充実させることは難しい。だからこそ、親の皆さんにも、そしてミネタにも伝えたい。がんばりすぎなくていいのだ。たとえ予定通りにいかなくても、流れに身を任せ、子どもと同じ目線で一緒に楽しもうとすれば、それで十分なのだから。
『首領ちゃん』はオススメのマンガである。休日、やることがないというあなたに。子どもといかに楽しく過ごすかで悩んでいるあなたに。
文=古林恭
