水すらまずくて飲み込めない! がん治療の副作用で発症した味覚障害。「食べる喜び」を失った著者を救ったものとは?【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2026/1/23

 喉の違和感から、中咽頭がんの発見に至った松本ぽんかんさん。『ママ5年目でがんなんて 手に入れた卵子と失った味覚』(松本ぽんかん/竹書房)には若さゆえの進行の早さや抗がん剤が卵子に与える影響など、たくさんの悩みと向き合ったリアルな闘病生活が描かれている。

 闘病中は味覚障害に苦しみ、一時は生きる気力をなくしたことも…。果たして、ぽんかんさんはどのように“日常“を取り戻していったのだろうか。ぽんかんさんが作品に込めた想いや闘病を経て得た気づきなどを伺った。

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※個人の体験、お話をもとにインタビューを行っています。初期症状や治療法、副作用など、詳細は医療機関等にご確認ください

――本作には、がん治療中に現れた味覚障害の辛さも具体的に描かれていますよね。

松本ぽんかんさん(以下、松本):食べ物や飲み物、全てがまずくて、水すら飲み込めませんでした。まるで、洗剤でも飲んでいるかのような苦み。口に入れてはいけないものを食べている感覚です。それと、唾液が全然出ないので、具のないスープやゼリーなど、少しでも固まっているものは口の中にベッタリ張り付き、飲み込めませんでした。汚い表現ですが、吐瀉物を口に入れているような感覚です。

――「食べる楽しみ」が生活の中から消えるのは、すごく苦しいですね。

松本:食べられない期間も料理は作らなければいけなかったので、それも地獄でした。おいしそうにできても食べられないし、味が分からないから味見もできない。家族に「おいしい」と言われても「まずい」と言われても辛かったです。

 そうなると、食について考えるのを止めるようになっていたんですが、飲食ができないって、とにかく暇なんです。暇なら仕事でもすればいいんですが、デスクワークの私はもともと常に何かを口にしながら仕事をしていたので、それがないと集中できなくて…。テレビや漫画を見ていても、食のことがどこからでもすぐ目に入ってくる。おいしそうだな…でも、私は食べられないんだなあ。つまらないなあ。何のために生きているんだろう…と感じ、笑顔が消えました。

――そんな中で心に染みたのが、旦那さんが作ってくれた出汁をきかせたすまし汁だったそうですね。

松本:あの時、すごくおいしそうな匂いがしたんですよね。寝ていたのに目が覚めるほどの香り。何を食べてもまずすぎて、ずっと口に何かを入れることを避けていたんですが、あまりにいい匂いなので、試しに口に入れてみようと思いました。

 味はしませんでしたが、鼻だけは放射線が当たらなかったので出汁の匂いがしっかり感じられました。飲んだ時は温かいものが喉を通り、お腹が温まる感覚を久しぶりに味わって、心底ホッとしました。おいしさって舌で感じるだけじゃなかったんだと痛感しました。

取材・文=古川諭香

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