アラフィフおひとりさまが「がん」になったら?5%の希少乳がんと診断された著者が描く、前向きに生きる実録コミックエッセイ【書評】
公開日:2026/1/7

「がんになりました」という言葉は、それだけで重く、読む側も身構えてしまう。けれど『50代おひとり様、5%の希少乳がんになりました』(ナヲコ:著、寺田満雄:監修/KADOKAWA)は、その重さを真正面から引き受けつつ、決して読者を置き去りにしない一冊だ。
健康診断を後回しにしていた未婚アラフィフの漫画家である著者が胸のしこりに気づき、「5%の希少乳がん」と診断されるところから始まる。「がん」と聞くと重大な病気だと思う人は多い。しかし、同じ病気を経験し克服した母親の姿を間近で見てきた著者は、過度に怯えることなく、希望を持って前向きに「がん」と向き合っていく。
本作は「がん患者」になる以前の、著者がそれまで築いてきた生活や価値観も丁寧に説明している。そして手術までの過程や、術後の治療と生活の変化が具体的に描かれている体験記でありながら、治療の知識だけに偏らず、「生活者として病と向き合うとはどういうことか」を実感をもって伝えてくれるのだ。随所で描かれるポジティブな姿勢には驚かされるが、それが読み手にとっても確かな希望として伝わってくるはずだ。
作中でも語られているように、同じ病名、同じ治療であっても、感じ方や薬の副作用、生活への影響は千差万別だ。具体的な「あるひとりの体験」を共有できる本作は、がん患者本人だけでなく、家族や友人、そしてこれから検診を受けるすべての人にとって、たくさんの気づきを与えてくれるだろう。読後には「知っておいてよかった」と思える確かな手応えが残る。
情報があふれる現代だからこそ、実体験が伝えてくれる力は大きい。治療法も生き方もひとつではない時代に、本作は「知り、選ぶ」ことの大切さを教えてくれる。ただ他人の経験として消費するのではなく、自分ならどう向き合うかを考えさせてくれる一冊だ。
文=つぼ子
