未成年の中絶、誰の同意が必要? “娘の妊娠”をテーマに描いた漫画で伝えたいこと【著者インタビュー】
公開日:2025/12/29

高校生の娘が妊娠…その時、あなただったらどうする?
そんなセンセーショナルなテーマを扱った『娘を妊娠させたのは誰ですか?』(たけみゆき/KADOKAWA)。真面目な夫と優しい娘とともに平穏で幸せな日々を送るさなえ。ある日、高校生の娘・春菜の妊娠が発覚する。相手は一年前から付き合っている彼氏・航太郎だという春菜。幾度か険悪な雰囲気になりながらも、双方の親たちの間では子どもは諦める方向にまとまる。しかしその時ふたりは――。
若年層の妊娠について調べた上で本作を描いたという著者・たけみゆきさん。調べる中で感じたことや、どのように漫画に落とし込んでいったのか制作の裏側を聞いた。
――まずは“自分の娘が妊娠する”という漫画を描こうと思った理由を教えてください。
担当編集:まずは私からの提案で。前作『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』を刊行した後、たけさんに次回作をぜひ書いてほしいと思ったときに「身近にある家族の問題ってなんだろう」と考えたんです。そこで、私には中学生の娘がいるのですが、「起きたらどうしよう」と思うことのひとつに娘の妊娠があるなと思いました。もし実際にそうなったら、現実的にどんな問題がたちはだかるのか、自分は親として何をすべきで、何ができるんだろう、と。それをたけさんに描いてもらえたら、すごく上手に表現していただけるんじゃないかと考えて提案しました。
たけみゆきさん(以下、たけ):前作は子どもの取り違いについて描いた作品で、子どもの出生、命、家族といったところをテーマにしたんです。それを終えて次の作品を考えたときに、私も家族の結びつきを描きたいなと思っていました。そこから担当編集さんにお話をいただきました。改めて考えると、最近も若年層の妊娠だったり、それにまつわる悲しい事件があったりしますよね。調べるうちにそれは当人同士の問題だけではなく、制度上の理不尽なところもあるなと思って。そのあたりも知っていただけたらいいなという思いで描きました。
――本作を描くにあたって、制度についても調べられたんですね。
たけ:そうです。「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を設置している熊本県の慈恵病院についてのニュースや、乳児の遺棄事件のニュースなどを読んだり、データをあたってみたりしました。漫画上の表現としてどういうふうに扱っているのかが気になって、同様のテーマについて描かれた漫画『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ/講談社)や『あの子の子ども』(蒼井まもる/講談社)を読んだりもしました。
――いろいろと調べられた上で伝えたいことは明確になりましたか?
たけ:はい。例えば妊娠した場合、中絶するときは誰のサインが必要なのか、緊急避妊薬(アフターピル)は買えるのかなど、若年層の妊娠・出産にまつわることについて、読者の方に具体的に考えてもらうきっかけにしてほしいという気持ちになりました。そしてできるだけ多くの選択肢を漫画の中で提示できればなと思いました。なお、中絶には原則本人とパートナーの署名が必要とされていて、病院によっては未成年者の場合は保護者の同意署名も求められることがあります。緊急避妊薬は一部薬局で試験的に処方箋なしでの販売がスタートしていますが、16・17歳の場合は保護者などの同伴が必要になってきます。
取材・文=原智香
