再生数のために娘を「コンテンツ化」する母親。子どもをネットにさらすリスクと承認欲求の間で揺れ動く親心の行く末は?【書評】
公開日:2026/1/9

SNSや動画配信が日常の風景となった昨今、私たちは「これって本当に正しいの?」と問いたくなる瞬間にたびたび直面する。『子どもをネットにさらすのは罪ですか?』(まきりえこ/KADOKAWA)は、その問いを真っ正面から描いたセミフィクションのコミックエッセイだ。
主人公は、パートで働きながら夫との将来に迷いを抱える主婦・山田あずさ。生活の窮屈さや夫婦関係の不和、ママ友からの軽い扱いなど、現代の親たちが共感できるような日常に押しつぶされそうになりながら、あずさは「デイチューブ」と呼ばれる動画配信サイトに救いを見いだす。最初は気軽な料理動画を配信していたが、再生回数や登録者数が増すにつれて、娘・ふうかの存在がコンテンツの中心になっていく。
この作品が秀逸なのは、タイトルにある通りの、単なる「インターネットに子どもを晒すことへの批判」だけではなく、そこに至る親の心理と家族のダイナミクスを丁寧に描いている点だ。もちろん、インターネット上に子どもの顔を投稿することの是非、軽率に投稿された映像が消せない「デジタルタトゥー」として残り得る現実も、読者に強い危機感をもたらすだろう。しかし、当初あずさは、娘を守ろうとする気持ちで顔を出さずに発信を開始している。にもかかわらず、見知らぬ誰かから人気を得る喜びや「再生数」という可視化された外からの承認が、徐々に判断を曇らせていく。やがて娘の存在は純粋な愛情の対象から「価値あるコンテンツ」へとすり替わり、境界線を越えてしまう。この心の動きこそ本書の見どころである。
さらに「親だけの物語」で終わらない。協力してくれた娘の視点も描かれるが、別アングルから見たあずさに対する評価とはどんなものだったのか……。子どものスマホやネット問題に悩む親はもちろん、長時間SNSに入り浸っている人に読んでほしい、デジタル社会の教科書のような一冊である。
文=おおぞら木馬
