モテる男の子を好きになってしまった。でも自分に自信がなくて踏み出せない…恋する気持ちを丁寧に描いた共感必至の獣人群像劇【書評】

マンガ

公開日:2026/1/24

おもいこみのノラ』(蒔/KADOKAWA)は、好きな人を前にして胸が高鳴る瞬間や、その人が知らない誰かと一緒にいるところを見て勝手に落ち込んでしまう時間など、恋をしたときに抱く複雑な気持ちを丁寧に描いた作品だ。

 折れた耳がチャームポイントの女の子・ノラは、誰からも一目を置かれるモテ男子・アルを好きになってしまう。好きな人は遠くにいてもすぐわかる。でも好きな人の好きなタイプはさっぱりわからない。大好物のツナサンドイッチもアルの隣ではなぜか味がしない。「今日は会えるかな……」とアルのことばかり考えてしまう。片思いをした彼女はさまざまな感情が入り混じる日々を送るのだが、そんなノラの思いの一方で、アルにも気になっている人がいて――。

advertisement

 本作が印象的なのは、ノラの心の動きがとても身近に感じられるところだ。相手の一言に一喜一憂したり、深読みしすぎてしまったりと、思わずうなずいてしまう場面が続き、ページをめくる手が止まらなくなるだろう。

 さらに、ノラが想像しているアルと、実際のアルには少しズレがあり、完璧な存在だと思っていた彼も実は不器用で迷いながら生きている。そのギャップがとても現実的で、等身大の恋として描き出しているのも魅力だ。加えて、キャラクターがすべてシンプルな線で描かれた獣人なのも大きなポイントではないだろうか。心情描写は人間そのものながら、その表情や仕草のひとつひとつがとても愛らしく、感情移入しやすいと思う。そしてほっこりするストーリーなので何度も読み返したくなるはずだ。

 恋に臆病な人、自分にダメ出しばかりしてしまう人はぜひ手に取ってほしい。誰かを好きになることが世界の見え方を変えてくれる。そんな前向きな気持ちをくれる作品である。

文=つぼ子

あわせて読みたい