車にキズをつけたのは誰の子ども? 真犯人がわからないまま、表面上は仲良しだったママ友4人の間に疑心暗鬼が広がっていく…【書評】
公開日:2026/1/27

母親同士の人間関係が、ある日を境に崩れていく――。『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』(ゆむい/KADOKAWA)は、ありふれた日々の中に潜む、目を背けたくなる現実を生々しく描いた作品である。
物語は、同じ幼稚園に通う4人のママ友たちの日常から始まる。同じバス停を使うことをきっかけに話すようになったという、表面的には良好な関係。しかしある日突然、「自分の子どもが犯人かもしれない」という事件が起こる。近所の車についた傷、自転車のサドルに開けられた穴、ボヤ騒ぎ……。連続する不可解な出来事をきっかけに、ウワサと憶測が広がり、真実がわからないまま4人の中に疑心暗鬼だけが膨らんでいく。本当の犯人は誰なのか。誰もが好き勝手に語りながら、真実には触れようとしない。
4人は「幼稚園のバス友」というつながりだけの関係のため、トラブルが起きたときに誰も本音を言うことができない。ママ友それぞれが意図的に真実を隠しているわけだが、その沈黙や遠慮が結果として事態をこじらせていく。最終的には真犯人にたどり着くものの、その背景が非常にダークで、結末まで読んだ後に残るのはあまりにも重たい余韻だ。
登場人物それぞれの立場と思惑を軸に物語が進み、終盤には少し意外な展開も待っている。「いかにもありそう」なシチュエーションばかりで、共感しながらもゾワゾワと不安を煽られ、気づけばあっという間に読み終えているだろう。
全編4コマ構成でテンポよく読める点もポイントだ。かわいらしく親しみやすい絵柄の一方で、物語が進むにつれて、恐怖とともに後を引く「違和感」が積み重なっていく。その未消化感は本作の魅力でもある。誰にでも起こりうる身近なリスクへの警鐘としても読んでおきたい一冊だ。
文=ゆくり
