彼から突然別れを告げられ、裏アカ監視の毎日…。歪んでいく愛が執着へと変わっていく過程をリアルに描いたコミックエッセイ【書評】
公開日:2026/1/22

『執着じゃない好きなだけだよ』(もつお/KADOKAWA)は、大学時代の初恋と失恋とその後を、過激な筆致で描き出した恋愛コミックエッセイだ。恋心がいつしか執着へと変わる過程を、主人公・きりこの視点でひりつくほど赤裸々に綴る。
物語は、大学4年生の春に始まる。これまで恋愛と無縁だったきりこは2歳年下のゆうだいと出会い、付き合うようになる。キス、お泊まり、旅行──。すべてが初めてで、心の底から幸せを感じていた。しかし大学卒業を境に状況は一変。きりこが就職し、社会人としての生活が始まると、ゆうだいからの連絡は次第に途絶えがちになり、やがて突然別れを告げられてしまう。
失恋の痛みは徐々にきりこを蝕んでいく。ゆうだいのSNSの裏アカウントを見つけた彼女は、その動向を追うために他人になりすましたアカウントを作り、仕事そっちのけで寝ても覚めても彼の行動を追い続けるようになる。愛ゆえの行動が歪んだ依存へと変容し、結果的により大きな痛みをもたらすことになるのだ。
話はさらに進み、別れから1年経っても吹っ切ることのできないきりこのさらなる執着が掘り下げられていく。彼女のとある行動をきっかけに、ゆうだいと再び連絡を取り合うことになり、ついに再会の機会を得るのだ。服を新調し、念入りに化粧をして臨む彼女。復縁への期待が膨らむが、その結果は……。彼に現実を突きつけられた瞬間のきりこの心情は、一度でも恋愛をしたことがある人ならば痛いほどわかるはずだ。
この作品が強烈なのは「執着」が愛をどこまで歪めてしまうのかという心理をリアルに描き出している点だ。初恋の輝きと、振られた後の絶望。単に好きだったという記憶を超え、過去に心が支配されていく過程を見せていく。その描写には痛みも恥ずかしさも、そして共感もある。恋は往々にして、甘さだけでは終わらない。
文=富野安彦
