仕事より“愛され力”が大事? 承認欲求に人生をささげた女が落ちていく危うさ全開の自己愛転落劇【書評】

マンガ

公開日:2026/1/26

愛され女子でスミマセン』(オニハハ。/KADOKAWA)は、“自分を客観視できない女性”の危うい心理を描いたコミックだ。主人公・野々村姫奈は26歳の派遣社員。「女子力が高く、気づかい上手で、仕事も完璧。今年こそ正社員間違いなし」そんな“理想の自分像”を本気で信じている。だが現実の姫奈は、自分勝手な振る舞いが目立ち、女性社員から距離を置かれてしまうような存在だった。

 姫奈が何より重視しているのは、仕事の成果よりも男性から“愛されること”。男性社員に気に入られようと雑務を率先して引き受け、気が利く女性を演じる姿は一見健気だが、その裏には「男性からの承認こそが自分の価値」という、歪んだ価値観が潜んでいる。

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 姫奈の言動はときに読者に不快感やモヤモヤを与える。しかし、単なる“嫌な女”として描かれているわけではない。「なぜ彼女はここまで愛されることに固執するのか?」と考えさせる余白がある点こそ、本作の大きな魅力だ。自分では器用に立ち回っているつもりでも、実際にはこじらせが暴走し、周囲との温度差は広がる一方。そんな“痛いほどリアルなズレ”が、姫奈という人物を強烈に印象づけている。

 物語を大きく揺さぶるのが、姫奈とは正反対の存在――槙さくらの登場だ。クールで控えめ、仕事ができて周囲から信頼される槙は、男女問わず自然と人が集まってくるタイプ。姫奈が必死に演じてきた“愛され女子”像を、努力せずとも体現してしまう槙の存在は、姫奈にとって脅威でしかない。焦燥と嫉妬、不安が姫奈の心に積み重なり、彼女の行動は次第に暴走していく。崩れていく姫奈の内面を追いながら、読者はその痛々しさと同時に、目が離せなくなるだろう。

 周囲から「変わっている」と距離を置かれる姫奈は、このまま破滅へ向かうのか。それとも、自らの歪んだ価値観と向き合い、成長へと踏み出すのか。“愛されること”にすべてを依存していた彼女が、どんな選択をするのか。その結末を見届けたくなる作品だ。

文=ネゴト / すずかん

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