親友のことは何でも知りたい。親友に執着しすぎて彼氏を寝とった“迷走女”の行く末は…『ややこしい蜜柑たち』【書評】

マンガ

公開日:2026/1/28

©︎雁須磨子/祥伝社 FEEL COMICS

 誰かを「好き」だと自覚したとき、その感情にはたいてい名前がついている。恋愛、憧れ、尊敬。でも、そのどれにも当てはまらない複雑な想いを抱えた経験はないだろうか。とくに親しい存在に、名前をつけられない感情を抱いてしまうと「この関係は何だろう」と考えずにはいられなくなってしまう。恋愛とは言い難いが手放すことも難しい感情と、どのように向き合えば良いのだろうか。

ややこしい蜜柑たち』(雁 須磨子/祥伝社)の主人公である清見が親友の初夏に抱く感情は、まさに名前をつけられない感情だ。高校時代からの仲である初夏は、陰気な清見にとっての唯一の友人であり、自分にないものを持つ存在。清見の感情は友人という枠を越えていた。初夏に誘われれば断れない、初夏のことなら何でも知りたい、そして初夏の彼氏にさえ興味を持ってしまうのだ。

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 親友に対する気持ちがエスカレートした清見はついに、初夏の彼氏・白柳と一夜を過ごしてしまう。白柳に惹かれたのではなく、初夏について同じ想いを抱いている人間に出会えたことが嬉しかったのだ。さらに清見は白柳との出来事を初夏に話してしまう。大切な親友との関係を、自分から壊しにいってしまったのだ。

 清見の行動は決して肯定されるべきものではない。だが執着しているがゆえに思いもよらない行動をしてしまった経験はないだろうか。好きだからこそ、嫌われることが怖くて、かえって地雷を踏んでしまう。感情が暴走し、結果大切な人を傷つけてしまうのだ。

 清見と初夏、白柳の関係は壊れ、そして数年後に再び交差する。彼らがどう向き合い直すのか、ありきたりではない関係から生まれた感情をどのように形にしていくのかに注目したい。そして名前のつけられない感情の先にどのような未来があるのかを、きっと示してくれるはずだ。

 友人への執着を抱えたことがある人、誰にも言えない「好き」を持て余している人に、ぜひ手にとってほしい。本作はあなたを悩ませる「ややこしい」感情に、寄り添ってくれるだろう。

文=ネゴト / くるみ

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