子どもが生まれて幸せなはずなのに満たされない…社会と分断された産後、SNSへの幸せ投稿が止まらない女性の心理【著者インタビュー】
公開日:2026/1/26

仲良くなれるはずだったママ友同士が、ふとしたきっかけでギスギスした間柄に転落していく。そんな、女性同士の複雑な感情の変化を描いた漫画が『私はあのママ友より幸せだと思っていたのに』(すやすや子/KADOKAWA)だ。
主人公のサヤカはイケメンの夫、9歳の娘、生まれてすぐの息子との4人暮らしだ。おしゃれに気を遣い、美男美女夫婦として憧れられるサヤカ夫婦。そんなサヤカ家族のもとに、同じマンションに引っ越してきたエミ家族が挨拶にくる。
「絵に描いたような素敵な家族」サヤカたちを見て憧れを抱くエミ。しかし実際は、サヤカは夫の不倫やモラハラに苦しめられ、終わりの見えないワンオペ育児にも疲弊し、産後うつ気味であった。
一方、エミは娘と夫との3人暮らしで家庭も円満。しかし、第二子の不妊治療がうまくいかずに苦しんでいた。
サヤカはエミへ、エミはサヤカへ。互いに羨ましい思いを募らせていく。やがて、ある事件が引き金となりふたりの関係は泥沼化。さらに、サヤカのキラキラした一面も崩れ落ちていき…。
「羨望」「妬み」「優越感」女性が抱えるじっとりとした感情を描く本作は、どのようにして生まれたのか? コミックエッセイ『毎日全力、たまーにズボラなすや子さんち』でも知られる著者のすやすや子さんに、お話を伺った。
――本作は、ふたりの女性のお互いへの嫉妬や嫌悪感が非常にリアルでした。ママ友同士であるサヤカとエミのマウント合戦の舞台になるのが「SNS」というのもリアリティがあります。すや子先生自身にも、SNSを通した苦い経験があるのでしょうか?
すやすや子(以下、すや子):私の場合はマウントを取られていたというより、私が勝手にママ友のSNSを見て落ち込んでいた、という経験があります。
産後の私は、「こんなにかわいい子の将来が、私の育て方のせいでダメになったらどうしよう」そんな風に思ってばかりでした。自分の育児に自信が持てず、落ち込んでいましたね。
産院で仲良くなったママ友が、雑誌の街角スナップにも載るような方だったのですが、その方の素敵なSNSを見ては上手くいかない自分と比べていました。焦って、自分もおしゃれな育児をしているかのような投稿をしたり……。
――産後は、社会と繋がっていない不安が強くなりますし、自分と子どもだけの世界になってしまうとそのような気持ちに駆られてしまいますね。
すや子:本当に、社会と分断されているからこそ承認欲求が高まっていたんだと思います。育児をしても誰も褒めてはくれませんから。
本当はめちゃくちゃ悩んでいたくせに、「今日はお料理作って楽しかった」「子どもが産まれて幸せ」みたいなポジティブな投稿をしていましたね。
――そこから抜け出し、SNS依存にならなかったのはなぜでしょうか?
すや子:「SNSを見ない、離れる」と決めたからでしょうか。けれど数年後、そのママ友のSNSを偶然見る機会があって。
「あの頃はキラキラした生活を投稿していたけど、本当は子どもと死にたいと思っていた」みたいなことが書いてあったんです。彼女も、実は自分と同じように悩んでいたんだな、と知りました。
そのような経験を経て、「もしかしたら、私と似たような思いをしている方がいっぱいいるのかも」と想像したのが、本作を描こうと思った理由です。
取材・文=原智香
