「金もねえくせに生意気だ」やりたい放題のモラハラ夫に虐げられる妻。そんな彼女を救ったのは反抗期の息子だった!【書評】
公開日:2026/2/6

「家族は守り、守られるもの」。そんな当たり前の価値観が、まったく通じない家庭がある。『モラハラ夫から助けてくれたのは反抗期の息子でした』(リアコミ:原作、はち:漫画/KADOKAWA)は、専業主婦として家庭を支えてきた主人公・翼が、夫の暴言と支配的な態度に耐えながら、やがて自分と息子の尊厳を取り戻していく姿を描いた物語だ。
翼は結婚してからというもの、夫から絶えずモラハラを受け続けている。彼女は「金も稼げねえくせに口答えして生意気なんだよ!」などと繰り返し罵倒され、心をじわじわと蝕まれていく。さらに追い打ちをかけるのは、息子・つかさの反抗期で――。
読み進めるごとに、夫の異常さはますます露わになっていく。金銭管理は彼の独断で育ち盛りの息子がいるのに生活費は3万円に抑えられているため夕食の材料費すらままならない状況。にもかかわらず自分はキャバクラで12万円分豪遊するなどやりたい放題だ。これらの常軌を逸した行動は事の大小の違いはあれ、現実の世界でもよく耳にする話であり、モラハラによって人生そのものが削り取られていく過程がリアリティをもって描かれている。
ところが、この悲惨な状況にも一筋の光明がさす。ある出来事をきっかけに思春期特有の反発にとどまらず、モラハラ夫に同調するかのような言動を繰り返していた息子が心変わりするのである。しかもそれは「母を守りたい」という大きな力に変わる。息子が抑え込んでいた不安や父への疑念を吐露し、翼にぽつりと漏らした言葉は、読者の胸を深く打つだろう。
その後、母子で証拠を集め、離婚を突きつけるまでの過程は決して楽なものではない。しかしその過程こそが、この作品の最も痛切なメッセージなのかもしれない。家族とはやはり、守るべき存在であり、そしてともに戦うパートナーなのである。
文=富野安彦
