姉妹間で生まれた劣等感は、なぜここまでこじれるのか… コンプレックスと向き合った実体験【著者インタビュー】
公開日:2026/2/1

大切なモノを何でも奪っていく。そんな人間が家族の中にいるとしたら――『世界で一番嫌いな女』(ただっち/KADOKAWA)は、妹と姉の確執を描く衝撃のセミフィクションだ。
26歳OL・エリは、学生時代から付き合っている彼にプロポーズされ、大きな幸せを感じる一方で、同時に胸の内に拭えない不安を抱えていた。原因は妹のまりあ。幼いころから姉を羨ましがってきたまりあは、事あるごとに姉のモノや人を奪ってきた。妹との関係に辟易していたエリは、できるだけ距離を保ってきたが、彼を連れて実家を訪れたその日、紹介するつもりのなかった妹と鉢合わせてしまい……。
怒涛の展開から目が離せないだけでなく、姉から妹、妹から姉という相互の腑に落ちない感情がリアルだと話題沸騰中の本作。こじれすぎた姉妹関係を描き出すこの物語は、どのように生まれたのか。作者のただっちさんに、創作の裏側について伺った。
――本作では、姉と妹の確執を描き出していますが、共感の声が後を絶ちません。どうして姉妹の仲はこじれてしまいやすいのだと思いますか。
ただっちさん(以下、ただっち):距離が近すぎるがゆえに、比較が起きやすかったり、親の愛情の取り合いが起こりやすかったりするからなのかなと思います。
――本作では、姉から妹へ、妹から姉へ、それぞれが感じる心のしこりがとてもリアルに描かれていますが、特に「コンプレックス」「劣等感」という言葉がキーワードであるように感じます。
「他人と比べることに意味なんてない。人はいつだってオンリーワンだ――なんてよく耳にしますが、それはきれいごとだと思います。頭ではわかっていても心がついてこないから、誰にでもコンプレックスがあるのではないでしょうか?」
ただっちさんは本作でこのように述べられていますが、この言葉にどのような思いを込められたのでしょうか。
ただっち:これは、私が劣等感を抱いたときにいつも「比べることに意味なんてない」と真面目に言い聞かせてきた経験から出た言葉です。私は長年、学歴や容姿にコンプレックスがありました。自分より優れた人を見て黒い感情を抱いては「人と比べても仕方がない」と真面目に自分に言い聞かせてきました。正しく、清い心持ちでいればきっと、心の底からそう思える人間になれると願って……。
確かに、小さなコンプレックスはそれで気にならなくなりました。ですが、傷の深いコンプレックスはそうではありませんでした。結局、目を二重にしても肌治療をしても、美人になれるわけでもなく、結婚してから東大の大学院に入っても、東大の中で劣等感を抱くことになった。理性で押さえ込もうとすると、かえって自尊心が下がって、負のループになるんだと思いました。
だからこそ、コンプレックスはコンプレックスでちゃんと認識して、向き合って、ケアしてあげるほうが心が落ち着くとわかりました。心の深い傷から生まれたコンプレックスが少しずつほどけていったのは、「十分だ」と思えるくらい自分と向き合ったからです。そんなメッセージを込めて描きました。
――ただっちさんは2人姉妹の長女で、さらに実の姉のように思っている従姉がいるそうですが、妹や従姉に対するコンプレックスとはどのように向き合っていますか。どうすればそれを乗り越えることができるのでしょうか。
ただっち:容姿や学歴コンプレックスに関しては、乗り越えるというより「もういいや」と思えるようになりました。「甘え下手」は乗り越えていませんが、今ではそのデメリットも受け入れた上で、そんな自分も悪くないな、と思えるようになりました。一番良くないのは、コンプレックスを無視したり、コンプレックスを認識せず、無自覚に他人に対してそれに関する悪い感情を抱いたりすることだと思います。まずは無視しないことが、向き合う第一歩だと思います。
取材・文=アサトーミナミ
