暴力やいじめに屈さず真実の愛を見つける。自己肯定感が低いサレ妻のシンデレラストーリーに勇気をもらえる理由【著者インタビュー】
公開日:2026/2/8

数多くあるサレ妻作品のなかでも、サレ妻×異世界という組み合わせがユニークな漫画『異世界転生したサレ妻ですがクズ夫を捨てて幸せを掴むことにしました』(綾束乙:原作、酒井美羽:漫画/KADOKAWA)。作画を手がけたのは、『酒井美羽の少女まんが戦記』(酒井美羽/秋田書店)でも話題の恋愛漫画の名手・酒井美羽先生だ。
物語は、ヒロインが転生した先の世界でもクズ夫と夫婦になって虐げられてしまう、という過酷な設定。そんな彼女の前に現れたのは、夫とは対照的にやさしく紳士的な青年魔術師エルヴァンだった。エルヴァンから魔術指導とともに愛情をうけ、クズ夫と対決するヒロインだったが…。
先が気になる展開に美麗かつ胸キュンな演出が加わり、サレ妻作品好きにも少女漫画好きにも注目される本作。苦難の末に自立して幸せになるヒロインを描ききった酒井先生に、作画や演出に込めた想いやこだわりを伺った。
——主人公のルミナエはいつも「まさか私が…」と言っている自己肯定感の低い女性でしたが、物語のなかで強く美しく変身して自立。スカッとしますし、勇気をもらえるシンデレラストーリーだと思いました。
酒井美羽先生(以下、酒井):原作者・綾束さんの他の作品も、主人公がみんなたくましいんです。一見しおらしいけど、そこで愛されるのではなく、自分の力で戦って惚れさせる。自分の力でなんとかしたいっていう意思を生かすようにしました。
外見も変わるため、可愛さを残しつつ美人風に描きました。変身する前の姿も好きだったので、ちょっと残念に思いながら。
——DV夫を成敗するところも格好良かったです。
酒井:最初に読んだとき、魔法というより、腕力で戦うところに驚いたんです。でも、そのくらい腹立たしい相手だったんだろうなと。本当はグーで殴ってから、吹っ飛ばして踏みつけるくらいしたかったけど、ページ数が足りなくて。
それと、夫のおなかのあたりを踏むはずが、どう考えても股間に近く(笑)。それはまずいと思って、少し位置をずらしました。こんなに強い女性を目にしても、エルヴァンは全然引かない。ますます惚れているみたいだったから、包容力があるなと。
——ルミナエは、普段の作品ではご自身で描かないようなキャラクターだったそうですね。
酒井:少女漫画の主人公ってだいたい弱くて、男の人に守られて幸せになるタイプが多い。でも、ルミナエは最後に実力でクズ夫を叩きのめす。普段描かないようなタイプの主人公で、とても新鮮でした。
——夫からひどい扱いを受けていましたが、元々のルミナエも素敵な女性だったと思います。
酒井:暴力を振るわれ、ご飯もあまりもらっていないのに、おいしくなさそうなパンとスープをちゃんと食べている。エルヴァンにおいしい食事をご馳走してもらっても、帰ってからまたひどい食事をちゃんと食べる。服も着たきりだけど、そんなに気持ちがすさんでない。
偉いし、くじけない強さが好きでした。クズ夫をさんざん懲らしめたあと、またしおらしい女性に戻るところも予想外で面白かったです。
取材・文=吉田あき
