弱々しく見えて、じつは強い。少女漫画のヒロインが、少年漫画に与えた影響とは?【著者インタビュー】
公開日:2026/2/9

数多くあるサレ妻作品のなかでも、サレ妻×異世界という組み合わせがユニークな漫画『異世界転生したサレ妻ですがクズ夫を捨てて幸せを掴むことにしました』(綾束乙:原作、酒井美羽:漫画/KADOKAWA)。作画を手がけたのは、『酒井美羽の少女まんが戦記』(酒井美羽/秋田書店)でも話題の恋愛漫画の名手・酒井美羽先生だ。
物語は、ヒロインが転生した先の世界でもクズ夫と夫婦になって虐げられてしまう、という過酷な設定。そんな彼女の前に現れたのは、夫とは対照的にやさしく紳士的な青年魔術師エルヴァンだった。エルヴァンから魔術指導とともに愛情をうけ、クズ夫と対決するヒロインだったが…。
先が気になる展開に美麗かつ胸キュンな演出が加わり、サレ妻作品好きにも少女漫画好きにも注目される本作。苦難の末に自立して幸せになるヒロインを描ききった酒井先生に、作画や演出に込めた想いやこだわりを伺った。
——酒井先生が少女漫画界の裏側を描くコミックエッセイ『酒井美羽の少女まんが戦記』は3巻まで刊行されています。少女漫画の魅力とはどのような点にあるのでしょうか?
酒井美羽先生(以下、酒井):女の子がいろんな面を見せてくれるのが少女漫画の面白さ。やっぱり、可能性を広げてくださったのは“花の24年組(昭和24年前後に生まれ、少女漫画の黄金期を担った)”の先生方ですね。
萩尾望都先生や竹宮惠子先生、大島弓子先生たちが少女漫画を文学のように仕立ててくださった。わりと難解だけど、それらの漫画を読んで育った人たちが、さらに少女漫画の可能性を広げていきました。
男性作家さんでも影響を受けている方はかなりいて、少年誌でも主人公はただ強いだけではなく、悩むし苦しんでいる。弱々しく見えて、じつは強い。主人公の内面を描くあたりは、少女漫画に影響を受けているんじゃないかと思います。
——先生はSNSでもさまざまな漫画の感想を配信されています。注目している作品を教えてください。
酒井:よしながふみ先生の『きのう何食べた?』は、本編以外の動きにも注目しています。よしなが先生ご自身が、主役ふたりの夜の営みを同人誌で描いているところが、とても興味深いです。連載ではそういう要素を描かなくとも、カップルとしてのふたりの世界が完成されているところが素敵だなと思いました。
『スキップとローファー』や『ブルーピリオド』は、青年誌で連載されながら、少女漫画っぽさもある作品。掲載誌に関わらずジャンルがクロスオーバーしている点がとてもいいと思います。
紙の雑誌は、手でページをめくって読むのが楽しい。漫画誌の数が減っているのは悲しいですが、なんとかがんばって買い支えたいです。
——最後にあらためて、『異世界転生したサレ妻ですがクズ夫を捨てて幸せを掴むことにしました』をこれから読む読者のみなさまへメッセージをお願いします。
酒井:転生を描いた導入部分は一見唐突かもしれませんが、入り込むととても楽しい世界です。サレ妻という初めてのジャンルに挑戦できたのは、編集さんと原作者さんのおかげ。楽しく華やかに描きましたので、ぜひお手に取ってみてください。
取材・文=吉田あき
