「きのこたけのこ論争」に火をつける衝撃のオチにツッコミ不可避! 訪問販売員が持ってきた謎の変換マシンを試してみたらまさかの結果に…【漫画家インタビュー】
公開日:2026/2/3

『グレードアップ』は、とある訪問販売の現場でのやりとりを描いた4コマ漫画だ。
ある日、家を訪ねてきた販売員が差し出したのは「何かものを入れるとグレードアップしたものに変換してくれる」という謎の機械。
そんな夢のような売り文句を聞けば試さずにはいられないのが人の性というものだ。ちょうど手元にあったお菓子を入れてみると、機械がガタガタと音を立てて作動する。やがて出てきたのは、なんと禁断の”ライバル菓子”で――!?
「そう来るか!」という皮肉とセンスで笑いを誘い、話題を呼んだ本作は、X(旧Twitter)を中心に人気を集めており、3万以上のいいねを獲得。作者・新濃(@NiinoNiio)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
こだわったのは、読者の論争を巻き起こすインパクトのあるオチ
ーー『グレードアップ』を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。
本作を描いたきっかけは、1時間4コマ会(1h4d)という企画に参加した際に、そのときのお題が「たけのこ」だったことです。そのお題から、お菓子の「たけのこの里」を題材にした4コマ漫画を描こうと思いました。
ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはどんなところですか。
本作を描くうえでこだわったのは、オチのインパクトを弱めないことです。お題が「たけのこ」だったので、きっと同じようにお菓子の「たけのこの里」を題材にした4コマが他にも投稿されるだろうと思いました。そうなると、4コマを読んだ人が「ああ、これもたけのこの里ネタか」と感じてしまい、オチの展開も悟られてしまうのではないかと考え、読者にオチを悟らせないということに注力しました。
具体的な見せ方としては、4コマの冒頭では入れたものをグレードアップさせる機械にのみ触れ、たけのこの里は2コマ目から登場させています。もし最初からたけのこの里を出してしまったら、オチのインパクトや意外性が弱まってしまうと考えたからです。そこで、入れたものをグレードアップさせる機械をメインに置き、たけのこの里をその機械に入れるサブ的なものとして登場させることで、オチで読者に衝撃を与えることを狙いました。
見てほしいポイントは、最後のコマの描写です。場面としては、機械から「たけのこの里をグレードアップさせたもの」が出てくるだけなのですが、それを訪問販売の女性と客の男性が無言のままただ見つめているという、見ていると徐々にジワジワくる絵面に仕上がっているなと個人的に思っています。こうしたジワジワくるような表現が好きなので、そこに注目していただけると幸いです。
ーーラストのコマで禁断の“ライバル菓子”が登場するという意外な展開に驚かされました。このオチは、どのような発想から生まれたのでしょうか?
たけのこの里を題材にすると決めた時点で、4コマを読んだ方々の反響を呼ぶような展開にしたいと思い、あの有名な「きのこたけのこ戦争」と呼ばれる論争に火をつける終わり方にしようと考えました。そこから、作品内でなんらかの形でたけのこの里ときのこの山にランクをつけることで、読者の論争を巻き起こすような展開のオチを思いつきました。そして、それを実現する方法として、「入れたものをグレードアップさせる機械」を思いついたという感じになります。
つまり、今回の場合はオチから発想していったということになりますね。さらに、日本では「たけのこ派」が多い傾向にあるらしい(私の周囲もたけのこ派が多いです)ので、たけのこの里がきのこの山よりもランクが下であるかのように描いたら、より反響も強くなるのではないかと考えました。実際、コメントが500件以上もつきましたし、その点でも効果的だったように感じています。
ーー読者の感想の中で、特に印象に残っているものがあれば教えてください。
一番印象に残っているのは、「きのこの山を(この機械に)入れたら、今度はたけのこの里が出てくるだろう」という内容のコメントですね。確かに、本作の場合、たけのこの里ときのこの山を入れ替えても作品として成立しますし、実際にそういう展開にしていたかもしれないので鋭いなと思いました。
あと、その解釈だとグレードアップする機械が「争いしか生み出さない機械」と化すわけで、まるで機械の人工知能が人類に争いをさせようとしているようなSF的な解釈もできるので、面白いコメントだなと思いました。
ーー本作のほかにも、オリジナルの4コマ漫画を数多く描かれています。限られたコマ数のなかで、面白さを伝えるために工夫していることはありますか?
セリフは基本的に短く、少なくするようにしています。セリフが多いと読むのが大変ですし、セリフを入れる吹き出しも大きくなってしまい、特に4コマは画面が元々小さいぶん画面が全体的に窮屈な感じになってしまうからです。
また、会話の間や余韻を特に大切にしていて、意識して取り入れています。具体的には、途中にセリフを一切入れないコマを挿入して独特な間を演出したり、今回の『グレードアップ』のようにオチを絵のみで表現して、ジワジワとした余韻を演出したりすることもあります。
私が描く4コマは、本作のように4コマ目にオチがくるもの以外に、3コマ目にオチがくるようなものも多くあります。その場合は、オチの余韻を演出するために余ったコマを使用しています。例えるなら、俳句における字余りや字足らずの手法に近いと思います。
ーー今後描いてみたい4コマ漫画のテーマやエピソードはありますか?
4コマ漫画は既にたくさん描いてきているので(トータルだと1000本は超えています)、今後は今まであまり描いたことがないジャンルに挑戦したり、従来の4コマ漫画とは違った、表現技法を試すような実験的な作品なども描いてみたいと思っています。
ーー今後の展望や目標を教えてください。
実はもともと、4コマ漫画の制作は漫画の描き方を学ぶために始めたものでした。今後は4コマ漫画で培った経験を活かし、4コマ以外の数ページものの読み切り漫画の制作にも精力的に取り組んでいきたいと考えています。すでに4~20ページ程度の短い読み切り漫画を何本か制作して投稿しておりますし、将来的にはそちらの活動をメインにしていきたいというのが現在の大きな目標です。
ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
私が描く漫画は、正直なところ万人受けするようなものではないと思っていたので、作品を投稿するたびにこれほど多くの反応をいただいていることに大変驚いています。『グレードアップ』についても、オチ的にある程度話題になるとは予想していたのですが、まさかこれほどの反響を呼ぶことになるとは思っていませんでした。
毎回作品を読んでくださる読者の皆様には大変感謝しております。今後は、4コマ以外の読み切り漫画も精力的に制作して発表していきたいと考えておりますので、ぜひ今後の活動にもご期待ください。
