親友を演じているのは、ママ友の夫を奪うため…ハイスペック男性に異常な執着を見せる「魔性の女」を描いた衝撃作!【書評】
公開日:2026/2/13

「ママ友」という存在には、育児の大変さが共有できる戦友という面と、ときに嫉妬や見栄の感情が渦巻く比較対象になってしまう面がある。『ハイスぺ夫略奪ママ友 女の友情は偽りでした』(きなりみや:漫画、つばさ:原案/KADOKAWA)は、後者の面が暴走した恐怖を描き出した衝撃作だ。
主人公・愛理は、将来有望なエリートの夫を持ち、はた目には幸福な生活を送っている。そんな彼女が親友だと信じて疑わないのが、美人で評判のママ友・香織だ。しかし、香織の微笑みの裏には、愛理のすべてを破壊しようとする冷酷な執念が隠されていた。
すべての引き金は、幼稚園の保護者会での出来事。夫の出世を誇らしげに自慢していた香織だったが、実は愛理の夫が同じ企業でさらに上の役職に就いていることが発覚してしまう。プライドを激しく傷つけられた香織は、自分より「格上」にいる愛理への憎悪を募らせ、彼女の夫を略奪することを決意するのだ。
香織が仕掛ける略奪のプロセスは驚くほど巧妙で執拗だ。単に美貌で誘惑するだけではない。愛理の夫に近づくために、まずは自分の娘を愛理の友だちにさせ、それをきっかけに家族ぐるみでの付き合いをはじめるという、あたかも自然に見える接近を画策。さらに自ら狂言を演じて愛理の夫と接触していく姿はまさに「魔性の女」だ。愛理が信頼していた存在から裏切られる痛みと、生活が少しずつ侵食されていく展開は、読み手に強い憤りと居心地の悪さを残す。そしてある事件を境に、夫婦の絆に決定的な亀裂が入るのだが、香織がその「王手」をかける場面の緊迫感は圧巻の一言だ。
一気に読み進めてしまうエンタメ性と、読後に残るざらついた余韻。「信じることの難しさ」を問いかけてくる本作は、平穏な日常の裏側にある「非日常」を味わいたい人にうってつけの刺激をくれる作品だろう。
文=ゆくり
