魔力を得るため魔女同士が結婚する世界!? 訳アリ先輩魔女×無垢な後輩魔女の絆を紡ぐ物語

マンガ

公開日:2022/8/20

魔女ノ結婚
魔女ノ結婚』(studio HEADLINE/KADOKAWA)

 自分を慕ってくれる友人や後輩、恋人というのは、多くの人にとって可愛く愛しいもの。しかしそうした存在は、ときに大きなプレッシャー要因となることもある。『魔女ノ結婚』(studio HEADLINE/KADOKAWA)は、そんな愛しさと嫉妬や焦りに揺れる魔女の物語。

 本作品を手掛けているのは、「みんなで面白い漫画を作って、世の中を面白くする!」というスローガンのもと漫画制作チームとして活動しているクリエイター集団、「studio HEADLINE」。ネーム、原稿、広報と役割分担をし、得意分野を活かしながらチーム戦で制作しているのが特徴だ。

 本作の舞台となっているのは、【真実の扉】を開くことを至高の目的の1つとして掲げている、多数の魔女たちが暮らす世界。この世界では、扉を開くのに必要な膨大な魔力を得るため【魔女ノ結婚】と呼ばれる魔女同士の契約が盛んに行なわれている。魔女・メリッサもまた、後輩魔女・ターニャと【魔女ノ結婚】を交わし、日々魔力を高めるべく生活を共にしている1人だ。

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魔女ノ結婚

 【魔女ノ結婚】の効果は、親密になるとより高くなる。そのため上を目指す魔女たちは、結婚生活の指南書「魔女ノ結婚手引書(ピカトリクス)」の内容に従い、生活していく中で親密度を高め合っている。メリッサは先輩魔女として、また結婚相手としてターニャの世話を焼き、彼女の心を掴んでいく。しかし実は、それは仮の姿。メリッサはこれまでにも何人もの魔女と結婚し、魔力を得るため利用してきたのだ。だから今回も――そう思っていた。

 しかしここで、メリッサにとって計算外のことが起こった。ターニャが可愛すぎるのだ。ターニャはただひらすら純粋にメリッサを慕い、「私の夢はメリッサさんみたいな魔女になることだから」と一片の曇りもない笑顔で言ってのける。

魔女ノ結婚

 そんなターニャに当てられ、メリッサは内心もうメロメロ。自身の策略とターニャへの気持ちに揺れながらも、何だかんだでターニャの成長を応援し喜ぶ日々を送っていた。

魔女ノ結婚

 そんな中、「魔女ノ結婚手引書」に「神獣ノ試練を受けよ」という文字が現れる。【真実の扉】へ近づくには、この試練をクリアしなければならないらしい。そしてメリッサは、この試練である“究極の選択”を迫られ、大きな成長を果たす。実力がありながらも歪な心と不安定さを抱えるメリッサと、まだまだ未熟だが心はまっすぐで無垢なターニャ。正反対ともいえる2人は、いくつもの試練や困難を乗り越えながらともに成長していく。

魔女ノ結婚

 こうして順調に仲を深めているように思えたが、8月10日に発売された2巻では、ターニャの魔法の才能が開花し始め、メリッサの心は再び大きくかき乱されていく。ターニャはメリッサの結婚相手で、彼女が強くなることは自分にとっても大きなメリットとなる。そう分かっているのに、ターニャの実力に嫉妬している自分がいたのだ。メリッサは自分の中に渦巻く醜い感情にショックを受け――。

魔女ノ結婚

 メリッサには、幼いころ「師匠」と呼んで慕っていた魔女がいた。しかしある時、「自分の弱さと向き合いなさい」「扉の向こうで待ってるわ」と言い残してメリッサの元を去ってしまう。メリッサが【真実の扉】の先を目指している理由は、その師匠の言葉に起因している。もしかしたらターニャを下に見ることで、「自分はできる魔女だ」という安心感を得たかったのかもしれない。

 この『魔女ノ結婚』を読んでいると、たとえ本当に思い合う2人であっても、秘密もあれば良からぬ感情が芽生えることだってあると改めて気づかされる。それはある程度長く生きていれば至って普通のことで、むしろ何もない方が不自然なのだ。問題は、その感情と向き合い乗り越えられるかどうか。メリッサは自分の弱さを克服し、無事ターニャとともに【真実の扉】を開くことができるのか。師匠と再び会ったとき、いったいどんな会話を交わすのか。引き続き注目していきたい。

文=月乃雫