ビジネスパーソンに響く名言・金言多数! ラーメン業界のカリスマを描いた人気シリーズ最新作『らーめん再遊記』
公開日:2022/9/16

ラーメン業界で成功するために必要なこととは何だろうか。もちろんまずは味だ。ただそれだけではだめなのだ。そのラーメンを出すお店の売り上げを安定させなければならない。当たり前のことではあるが。
そんなリアルな視点でラーメンビジネス事情を描いたマンガが『らーめん再遊記』(久部緑郎:作、河合単:画、石神秀幸:協力/小学館)だ。
主人公は芹沢達也。彼は、世界観と一部の登場人物を本作と共有している『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』(どちらも小学館)でもメインキャラクターのひとりだった。超人気ラーメン店「らあめん清流房」の店主兼フードコーディネーター、そしてフード・コンサルティング会社「清流企画」の社長であり、ラーメン界の絶対的カリスマだ。
そして本作『らーめん再遊記』は、そんな芹沢を中心に、ラーメン業界の現状、ラーメン職人の独立後の難しさ、ラーメン店舗運営のノウハウ、ラーメンビジネスを成功させるために重要なことなどが生々しく描かれている。
本作はドラマとしても面白いのだが、実際にラーメン業界に飛び込もうと思っている方にも、大きな学びになるのではないかと感じた。本稿では、物語と芹沢というキャラクターの魅力、そしてラーメン業界や店舗経営に関しての金言・名言を紹介していく。
ラーメン界の絶対的カリスマ、社長を辞して情熱を取り戻す
『らーめん再遊記』は、芹沢の会社「清流企画」の会議から始まる。現在は「らあめん清流坊」をはじめ全店が堅調。特に、前作『らーめん才遊記』の主人公・汐見ゆとりの店「麺屋なでしこ」は売り上げを大きく伸ばしていた。ただグループ旗艦店である「麺屋せりざわ」は売り上げがゆるやかに下り坂だった。それを聞いても妙に落ち着いた様子の芹沢。ラーメンの味と店舗の経営に高い熱量をもっていた社長のありえない態度に、ゆとりたち社員は不安を感じる。
芹沢は世界的グルメガイド「ムシュロン」で二つ星を獲得した「東京ガストロノメン」店主・米倉と出会う。成り行きでふたりはラーメン対決を行い、芹沢の消えかかっていたラーメンに対する情熱の炎が復活。お酒をテーマにしたラーメン対決で米倉を撃破した。しかしゆとりは、そんな芹沢と米倉のラーメンを超える創作ラーメンをやすやすと作ってみせる。
彼女の実力を改めて認めた芹沢は、ゆとりに社長の座をあっさりと譲ってしまう。ただ気持ちが折れたのではない。彼は、「好きなラーメンを好きに作りたいだけのイカれたラーメン馬鹿」に戻ったのだ。ここまでが本作のプロローグだ。
ラーメンチェーンのアルバイトに転身?
郊外ロードサイトのラーメンチェーン店「ベジシャキ豚麺堂」。そこで芹沢はアルバイトとして働き始める。
芹沢は決めたのだ。今までは創作ラーメンという「作品」を作り続けてきたが、これからは「万人の形式」になるラーメンを作るのだと。「形式」とは醤油・味噌・塩・トンコツに匹敵する味だ。
そのために彼は、何の変哲もないラーメンチェーン店を巡る。芹沢はそこで、ただ味を追求していただけでは見えない景色を見るのだ。チェーン店から独立した職人の閑古鳥の泣くお店もあれば、味は大雑把で凡庸なのに客が入るチェーン店もある。
芹沢はそこを鋭く分析していく。数多く描かれる彼の解説シーンは、そのまま現実のラーメンビジネスのヒントになるので読んで確かめてみてほしい。
しかし……既存のラーメンのことを知り尽くしている彼にも説明のつかないことがあるようだ。芹沢は大学時代から通っている中華チェーンを見つけて、思わず入店してしまう。
俺にはこれがうまいっ!!
チョーうまいっ!!
一体どういうことなのか…自分でもわけが分からない!?
この程度のタンメンや辛味噌…俺がその気になったら、いつでもたやすく作れるというのに…!!
何故、俺はこんな代物に何十年も魅了されている!?
好きだから好きだとしか言いようがない!!
私にも覚えのある感情だ。ハイレベルな創作ラーメンを作る男がみせた人間味に思わずクスリとさせられた。
ラーメンにかかわる人々へ捧ぐ“芹沢語録”
最後に芹沢の金言のようなセリフを紹介し、解説していく。
「商売は成り立っている限りはみんな正解」
ブームの頃みたいに大儲けはしてないだろうが、
決して間違っていたわけでもない。
商売っていうのはどれくらいの儲けで手を打とうが、
それで成り立っている限りはみんな正解なんだ。
店が続くということは、間違っていなかったということ。続ける=利益は出ている、ということだからだ。売り上げの低さは、ワンオペや家族経営によってカバーできることもある。私の家の近くにもチェーン店よりも安くラーメンを提供していたり、このご時世でも値上げをしたりしない個人店がある。
「チャーハンと餃子をメニューに加えよ」
どんなラーメン店でもチャーハンと餃子は本当に強い
どちらかがラーメンにそえられるだけでボリュームはアップし
それなりにご馳走感も出て食事満足度が一気に上がりますから
これは新進気鋭のラーメン職人へのアドバイスだ。「独創性あるラーメンで道行く人々の好奇心をかきたてつつ、餃子とチャーハンもあることで安心感も与える二段構えで誘いこもう」というもの。両方とも原価があまりかからず、利益率が高いのもポイントだ。この職人は、味や独創性にばかり気をとられて「お客さんは食事に来ている」という一番肝心なことを忘れていたことに気付く。
「自惚れた勇者よりも、賢い臆病者のほうが強い」
怖がり過ぎて現実から目を背けてはいけませんが…
臆病な心で現実を凝視する姿勢は大事です。
それはリスクを正確に把握し、対策を用意することにつながりますから。
自惚れた勇者よりも、賢い臆病者のほうが強いんです。
最後も同じラーメン職人へのアドバイスだ。「虎、ライオン、ヒグマ……といった猛獣は実は気が小さく警戒心が強いもの」とも言っている。これはラーメンや飲食店に限らず、すべてのビジネスパーソンが認識しておくべきことかもしれない。
文=古林恭